++其の弐++

生徒達が次々と帰っていく中、なかなか席を立たない萩原にクラスメイトが尋ねる。
「萩原、帰んないの?」
少し眠そうな眼で友人を見つめ、答える。
「島田、待ってるの」
そういうと、友人は「あっ」といってカバンから何かを取り出そうとする。
「そういえばさ、昼休みのお菓子。お前の分とっといたんだよ。島田が来るまでこれでも食べて…」
と、その時。猛ダッシュして教室に入ってきた島田。
「萩原!!早く!!良知君待ってる」
言うなり萩原の腕を引っ張って教室を出ようとする。
「あ、お菓子…」
と、未練がましく呟いてみたところで島田は待ってくれない。
また、食べ損ねちゃった…
少し悲しい気持ちになりながら、島田に引っ張られるままに学校を後にする。
+++++++++
「適当に座ってよ」
綺麗に片付いた部屋。一人暮しの良知の部屋はいたってシンプルだった。
机とベッド。そして、難しい本の並んだ本棚。
「で、2年前の話だよな」
興味深げに見つめる3人に良知は話し始めた。
七不思議は2年前までは六不思議として常に話題になっていた事。それによってかなりの人が心霊現象を体験した事。そして、2年前に七不思議が解決されるキッカケとなった人物の話。
「当時の生徒会長が不思議な人だったんだ」
名前は≪大野 智≫
普段はボーっとしているが、怪奇現象がおきると不思議な呪文によってそれらを次々と解決していったという。
「6番目の事件を解決したあと、とうとう7つ目が現れたんだ」
6つの事件を起こしていた霊を操り学園を恐怖に陥れようとしていた、いわゆる「ボス」の存在。その「ボス」を大野智が強力な力で封印した事。
「僕ら生徒会役員は全員その光景を見てたんだ。まるで映画のようにすごい光景だったよ。奴は確かに封印されたんだ。だから、七不思議が復活するなんて考えられない…」
そこまで話すと、良知は黙り込んだ。
「じゃあ、そのボスが復活したって事?」
石田が続ける。
「もし、そうならそいつを封印しないかぎり七不思議はなくならないんだよね」
それまでただボーっと皆の話を聞いていた萩原が口を開く。
「…でも、実際被害にあった人がいるの?」
「そこだよな、3年が当時のことを思い出して噂を流してるだけかもしれない」
良知もうなずく。
…が、
「いるんだよ、先週学校に忍び込んでる奴が」
…暇な奴だ。と思いつつ萩原が口を挟む。
「一人?」
「違うよ、2年の中丸くんと上田くん」
「それで、何が起きたの?」
興味深げな石田。
「まさしく、噂どおり4:44にピアノが鳴ったんだ」
「1つ目の不思議か」
良知が言う。
「俺達で、七不思議を調べてみない?」
島田が言う。
しばらく沈黙が続いた後、良知が口を開いた。
「このまま放ってはおけないよな。調べてみるか」
他の二人もうなずいた。
「だったら、もう一人。役員を呼ばなきゃな。2年前を知ってるもう一人の人物だ」
良知が携帯を取り出した。



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