++其の弐拾++

「言うだけの事はあるんだな」
やるじゃん、
滝沢は笑う。しかし、すでに最初の頃のような不敵な笑いではなかった。
「どうして…」
小さく、萩原が唇を噛み締めながら呟く。
「どうして…友達なのに、」
こんなことができるんだよ…
その言葉に、滝沢は一瞬寂しそうな眼をした。
が、すぐに笑って答える。
「友達だから…だよ、」
お前には、まだわかんねぇよ…
そういうと、滝沢は右手をかざす。
「さぁ、ゲームを始めようぜ」
++ ++ ++
それは壮絶な、そして過酷なゲームだった。
滝沢の放つ炎のような光は、萩原の腕を掠め島田達に向かって飛んでいく。
「危ないッ」
町田が叫ぶと同時に、島田達はしゃがみこむ。
…が、その前に良知が立ちはだかり、手のひらを光に向けて差し出し、呪文を唱えた。
   ッ、」
眩い光が良知の手のひらから飛び出し、滝沢の光を跳ね返す。
「やるじゃん、成長したなお前」
でも…まだまだ、だよ
言うなり、滝沢が攻撃を仕掛ける。
それは、萩原の右足を捕らえ、萩原はバランスを失った。
「うッ…」
なんとか、体勢を立て直し、滝沢に向かって呪文を唱える。
                     
それと同時に、滝沢も何かを呟いていた。
大野が叫ぶ。
「萩原ッ!!やめろ、術返しだッ!!!」
しかし、その叫びは遅く…
萩原の口からは、すでに呪文が飛び出していた。
それは、そのまま萩原へ跳ね返る。
「うわッ…」
「萩原ッ」
屋良が叫ぶ。
予想していなかった事態に、萩原はまともに攻撃を受けてしまったようだった。
しかも、その力は萩原自身の持ってる最大限の力を込めたものだ。
「ッ…、」
苦しそうに蹲る萩原。容赦なく襲いかかる滝沢。
滝沢の手が萩原を捕らえようとした瞬間
「まだまだ、だね」
呟いた萩原の右手が滝沢に伸び、お札をはりつける。
「うぁッ…」
貼られたところから、煙が噴出す。
「何度も言うけど、」
負けるつもり、全然ないから…
そのまま、滝沢に貼り付けたお札に気を注ぎ込む。。
「そろそろ、諦めたら?」
今までに、見た事のないような不敵な萩原の笑い。
滝沢は蹲る。
「ダメだ、お前には…」
やられるわけにはいかないんだ…
小さくうめく様な滝沢の呟きは、大野はもちろん、萩原にすら届かなかった…なぜか良知を除いては。
「萩原ッ…俺、間違ってた。大野君じゃ、ダメなんじゃない…」
大野君じゃなきゃ、ダメなんだ…
「良知…?」
大野の力ない視線が届く。
「待ってたんだ…彼は、大野君がもう一度ここへ来る事を…」
そして、自分を倒してくれる事を…
「…違う、」
滝沢は頭を振る。
「そんなんじゃ、ないッ!!!俺はッ…」
言いかけた滝沢に、良知が首を振る。
「終わりにしなくちゃ、」
いつまでも…辛いだけだよ
「違うッ…俺はただ、」
必死に反論する滝沢を、萩原が、制す。
「僕じゃなく、大野君に、送って欲しいんでしょ?」
だから、もう一度七不思議を起こしたんだよね
「そうか、大野君と会う為の七不思議だったのか…」
石田が、ポツリと言った。
「大野君、優しいから滝沢君の事送る事出来ないし…だから、大野君を痛めつける事で、優しさを捨てさせて、全力で送って欲しかったんだ」
屋良が言う。
「滝沢君が思う以上に大野君の優しさは大きかったって事だ」
島田が呟くと、滝沢の眼から一粒…また一粒と涙が落ちていく。
「大野、お前のせいだな」
町田が大野の肩を叩きながら、言う。
「しん、ご?」
見上げる大野に、言い聞かせるように続ける。
「お前の優しさが、滝沢にとっては辛い事だったんだよ。滝沢の事を思うんなら、消滅させた方が、良かったんだよ」
「…でも、」
「お前には、滝沢を送る義務がある。お前がやらなくちゃ、ダメなんだよ」
「…」
力なく項垂れた大野の前に、萩原がそっと近づく。
「大野君、僕ね、無理みたい」
ニッコリと微笑む萩原。
「は、ぎわら?」
「僕じゃね、勝てないや。強いよ、アイツ。大野君じゃなきゃ、送れない」
だから…
大野の折れた腕に手をかざす。全身の力をそこへ注ぎ込む。
腕は光に包まれ、徐々にもとの形へと戻っていく。
「これで、終わりに…しなくちゃ、」
友達、なんでしょ?
そういって、力を使いきった萩原は意識を失った。
「ここで、やらなきゃ男じゃないよね」
大野を立たせ、町田は『トンッ』と、大野の背中を押す。
意を決したように、全員の顔を見渡し、ゆっくりと頷いた大野は、蹲り静かに泣いている滝沢に近づく。
「滝沢…」
ゴメンね…
「俺が、弱かったばっかりに」
「大野…」
「俺は、優しかったんじゃない。弱かったの。滝沢の事、消滅させるなんて、」
怖くて、出来なかったんだ…
「ゴメンネ、今度こそ…滝沢を送るから…」
俺が、
「大野」
ゆっくりと立ち上がる滝沢を、大野はギュっと抱きしめた。
「絶対に…また、会おうね」
約束だよ、
そう言って、優しく微笑むと大野は呪文を唱える。
         …、    ッ」
滝沢の体を、眩い光が包む。
ゆっくりと、キラキラした光に変わっていく滝沢の姿。
全てが終わってしまう、その直前
「ありがとう…」
大野の耳元で、やっと…滝沢が笑った。
そして、全ての光が消えると…大野の腕の中には意識を失って寄りかかっている「山下智久」が残った。



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弐拾でっすッ!!
いや、思ったより幸人は活躍しませんでしたねぇ(汗)。
でも、私の中では幸人はとっても素敵な活躍をしたな、と思ってます(笑)。
ってか、当初考えてたネタ全部入れようと思ったら、全然終わりそうもなかったんで(汗)。
でも、一応詰めたい事は出来るだけ詰めてみました。
さて、次回はエピローグ!!!つまり、最終話の予定ですvv
しっかりまったりした大ちゃん&幸人を書きたいなぁ、と思ってますv
なにせ、考えてたのはここまでのお話ですから。最終話は全く何にも考えてません(笑)。


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