++其の七++

 
実験室の前につく。確かに部屋中が真っ赤に染まっているように見える。
しかし、二人の言ってたような人影は見当たらない。
「…誰も、いないよ?」
島田が赤西の方を振り返って言う。
「うそっ!!だって、いたよ!!間違い無く白衣来た男が!!」
見たよな。と亀梨を振り返る。力強く頷く亀梨。
「とにかく、入ってみよう」
そう言って良知がドアを開け、中へ入る。
最後に石田が部屋の中へ入った瞬間、
バタンッ!!
と音を立ててドアが閉まった。
「…来た」
萩原が呟く。と同時に薬品棚がガタガタと揺れ出す。
「な、なんだよ…コレ」
呆然とする赤西達。
「ポルターガイストだ。ヤベェよ、マジで」
そう言った屋良のすぐそばにあるビーカーが突然粉々に割れた。
破片が宙を飛び交う。
『クククッ…久しぶりのモルモットだよ』
声のする方を見ると、さっきまでは誰もいなかった場所に人がいる。
白衣を着た男。そして、その白衣は所々
まるで血に染まったように赤く染みがついている。
「モ、モルモット…?」
今にも消え入りそうな声で聴き返す亀梨に男はその視線を向け歪んだ笑顔を見せる。
『僕はね、実験が大好きなんだ。でも実験にねずみ使ったりするのって可哀想じゃない?罪も無いのにさぁ』
笑いながら白衣のポケットに手を入れる。
『だからね、罪深い人間を使うんだよ。
お前らみたいなね
言った瞬間ポケットからメスを取り出し振りかざす。
振り下ろしたメスの先から鋭い刃のような風が亀梨を襲う。
「危ない!!」
間一髪で島田が亀梨を突き飛ばす。
その時、良知は男に向かって呪術を唱え始めた。
「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在…」
『やめろ』
言い終わるか終わらないかの内に男のメスが宙を舞う。
それは良知の右腕を微かに切り裂いた。
「ッ…」
痛みが走る。切り裂かれた場所から、確かに血が溢れていた。
『あれ、外しちゃった。そんな程度じゃダメだよ。もっともっと血を噴出すくらいじゃなきゃね。僕はね、切り刻むのが大好きなんだ』
男は更にメスを投げようとする。
          …」
それまでずっと黙っていた萩原が呪を唱え始めた。
『やめろってば!!』
男はそう言って頭を抱える。
しかし、萩原は止めようとしない。
      っ…」
『その呪文、嫌いなんだ!!!』
男は半狂乱になりながら、ものすごい勢いで萩原に向かって襲いかかる。
必死にかわしながら良知と共に術を唱えつづける。
『切り刻んでやるっ!!!』
メスを振り回し二人に向かってくる。
良知は術を唱えながら、必死に2年前の事を思い出そうとしていた。
たしかに、この男も2年前と同じだ。だとすれば、弱点があったはず…。
大野君が最後に攻めた弱点…
「…だめだ、どうしても見えない」
術の合間にふと萩原が言う。
「何が…」
良知が尋ねる。
「あの男、操られてる。洗脳されてるんだ。何処かにそれを解く事のできる個所があると思ったのに…ずっと探してたんだけど無いんだ…」
そう言ってまた術を唱え始めた萩原に、良知が告げる。
「こいつ、弱点があったはずなんだ。そこがもしかすると洗脳を解くポイントなのかもしれない」
大野君が最後に唱えた呪文。それは何処に向けて放たれたのか…僕は見ていなかった。でも、あの後大野君がポツリと言ったヤツの弱点…。
ダメだ、思い出せない…
良知が諦めかけたその時、
「左目だ!!!ヤツの弱点は左目だよ。大野君は最後に左目を指差して術を唱えてたんだ!!!」
突然思い出したように屋良が叫ぶ。
その瞬間、萩原が男の左目に向けて指を振り下ろす。
『うぁ    っ…』
男は左目を押さえてもがき苦しむ。
その隙に良知と萩原が浄化の術を唱え始める。
「君は…もうここにいちゃいけない。帰るんだ」
萩原がそっと囁きながら蹲る男の頭に手をかざす。
『左目の奥から声がしてたんだ。切り刻めって…その声を聞くと自分がわからなくなって…。』
男は呟く。
「君は洗脳されていたんだよ。君を再びココに呼び戻したヤツにね」
良知が言う。
『助けてくれて、ありがとう…』
男が寂しそうな笑顔を浮かべて言う。
「もう、自分を見失っちゃだめだよ」
そういって笑う萩原に男は振り向きこう言った。
『前にも…同じ事言ってくれた人がいたよ…』
その声は眩い光にかき消されるように消えていった。
+++++++++
「なんか、凄いモン見ちゃったな…」
全員無言でたどり着いた良知の部屋で、放心状態の赤西がやっと口を開いた。
「ホント、映画みたいだった」
亀梨も夢でも見ていたかのような気分で答える。
「それにしても…良知君も萩原もすごいね」
石田が感心して言う。
「俺は、そんなに役に立ってないよ。萩原のおかげだよ」
そう言って笑う良知に
「今回は、屋良君のおかげだよ」
と萩原が眠そうな目をこすりながら言う。
「え?俺??」
ビックリして自分を指差す屋良。
「そうだね、やっぱり屋良っち記憶力いいじゃん。助かったよ」
良知も微笑む。
「…ま、まあね。で、でもたまたま覚えてただけだって」
照れながら謙遜する屋良に良知が言う。
「でも、どうしてその記憶力は勉強につながらないんだろうね」
「ほっとけよっっ!!!」
キレる屋良の横で、亀梨が島田の袖を引っ張る。
「ん、何??」
振り向く島田に、亀梨は俯いたまま呟いた。
「…あの時、助けてくれてありがと」
何の事かわからず目を丸くしている島田に
「突き飛ばしてくれなかったら俺、死んでたかも」
と亀梨は続けた。
「…お礼なんて言うなよ、らしくなくいじゃん。助けるのなんて当たり前だって。俺ら友達でしょ」
と、こちらも照れ隠しにそっぽを向いて答える島田。
そんなやり取りを見ながら、皆カッコイイなぁ〜、と思いつつ一番の貢献者は眠りにつこうとしていた。


**コメント(言い訳)**
なんとか2番目の不思議も解決。ってか無理やり?(汗)
なんだか、わけわかんない話になってきちゃったなぁ。辻褄あわなくなってきてないかなぁ。そろそろ、この事件、一気に解決したい(笑)。

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