++其の十七++

草木も眠る丑三つ時…
漆黒の闇に包まれる午前2時過ぎ。
良知は、その場に相応しくないけたたましいチャイムの音で眼を醒ました。
「…何?」
眠い眼をこすりながら、そっとドアへと近づく。
ドアスコープから覗いてみるとそこには…
「どうしたの?」
言いながら、ドアチェーンを外し、ドアをあける…と同時に泣きながら駆込んできたのは…
「ラッチ、助けて!!!もう、怖いよ〜。一人じゃ寝れないよ〜!!!お願い!!!一緒に寝て!!!ココ、泊めて!!!っていうか、何が何でもココで寝るから!!!」
と、一気に捲し立てる屋良。
「屋良っち…どうしたの、一体?」
尋ねる良知に
「もう怖いよぉ…やだぁ…もう、帰れないよぉ…」
と、泣きじゃくるばかり。
「とにかく、落ち着いて。ほら、入って」
部屋へと連れていき、ソファへ座らせる。
「ちょっと待ってて」
と台所へ行き、ホットミルクを入れ戻ってくると、屋良はクッションを抱きかかえて顔を埋めていた。
「コーヒーだと、眠れなくなるだろうし…」
差し出したカップを屋良は振るえる両手で掴んだ。
「ありがと」
屋良が一口飲んだのを確認し、静かに尋ねた。
「落ち着いた?」
「…あんまり。でも、大丈夫」
「何があったの?」
良知の問いかけに、屋良はまた眼を潤ませながらゆっくりと話し始めた。
++ ++ ++
ついつい、町田と長電話をしてしまい、眠りについたのは0時過ぎ。
やっと深い眠りに到達しようとした屋良は、不図息苦しさを感じた。
「…ん、」
寝返りを打とうとしたその瞬間
「…ッ」
体が、動かない。
まるで凍った様に指先すら動かす事が出来ない。
その上、息苦しさは徐々に増していく。
眼を、開けちゃいけない。
そう思った。本能的に、危険と感じたのだ。
でも…
操られる様に、屋良は薄っすらと眼を開けてしまった。
眼に飛び込んできたその異様な光景に、叫ぼうにも声が出ない。
恐怖に体中から汗が噴出す。
そんな屋良に、息苦しさの原因は笑いかけてきたのだ。
『遊んで』
屋良の胸あたりに座っている少女は、そう言って屋良の耳元へと顔を近づけた。
『とっても探したんだから…』
やっと、見つけた…
屋良の背中に悪寒が走る。
その時…
「うッ…」
少女は突如苦しみ、胸を押え…そして消えた。
それと同時に屋良の金縛りは解け、屋良は即座に良知の元へと向かったのだった。
++ ++ ++
「それは…怖いよね」
屋良は極度に怖がりである。
最近はちょっと怖い話にも興味を持ってきたみたいだが、元来物凄く怖がりだ。
そんな屋良が、こんな眼にあったならば…かなりの恐怖を覚えたに違いない。
「『怖いよね』…って、怖かったに決まってるじゃん!!!」
微妙な逆ギレしつつ、屋良はミルクを飲み干した。
「その少女は…どんな感じだったの?」
「…綺麗な子」
「は?」
「や、綺麗な子だったよ。10歳くらいの」
「10歳位…?」
「そ、幼い感じだった」
答えた屋良に
「屋良っちに言われるんならかなり幼いんだろうね」
と、思わず呟いた良知。
「…どういう意味?」
涙目ながら睨みつけてくる屋良に
「や、深い意味はないけど」
と、慌てて答えて話を戻す。
「綺麗な10歳の女の子が、どうして屋良っちのとこに現れたんだろ」
「わかんないよぉ。でも、『探した』って言ってた」
首を傾げながら答える屋良。
「屋良っちの事、探してたって事だよね」
「でも、10歳の女の子に知り合いなんていないよ〜」
誰だよ〜。なんなんだよ〜。
と、ぼやく屋良に
「でも、向こうは屋良っちを知ってる…」
「だいたいさぁ、綺麗な子だから余計怖いんだよぉ…」
またクッションに顔を埋めた屋良っちの頭をヨシヨシと撫ぜてやりながら、良知は屋良に問いかけた。
「とりあえず…相談、してみる?」
携帯を取り出した良知に屋良はコクっと頷いた。
「そうする…だって、怖いもん」
++ ++ ++
「屋良君って…可愛いんですね」
石田の言葉に、屋良は抱えていたクッションを投げつけた。
「可愛いって言うなぁ!!」
「だって…怖くて一人じゃ寝れないなんて…可愛いじゃないですか」
そう言って笑う島田に屋良は更に頬を膨らませる。
「怖いモンは怖いんだよ!!!」
「石田…島田も、止めろよ。実際同じ眼にあったら二人だって怖いと思うよ?」
良知の言葉に
「…そうだよな。ごめん」
謝る二人に対し、
「謝るなら許してやる」
と、偉そうな屋良。
その時、大きなあくびをしてから…
「ところで、どんな子だったか、もう少し詳しく教えてくれない?」
良知にいれてもらったホットミルクを飲み、萩原が尋ねた。
「あ、そうだった。その為に来てもらったんだった」
屋良はそう言うと、説明し始めた。


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第17話で〜す。
急に「続」が書きたくなって、執筆途中のもの投げ出して、こっち書いちゃいました。
その割に何も考えてない内容ですいません〜(汗)。
しかも短め…(滝汗)
でも、やっぱり書いてると、私の原点はこれのような気がします。
このシリーズだけはいつまでも書いていきたいなぁって思いますね。
…って読んでくれる人がいれば、の話ですけど(苦笑)。

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