++其の十八++

「突然息苦しくなって」
屋良はゆっくりと話し始めた。
「苦しいって思った時には、もう身動きとれなくて…」
突然、背筋に悪寒が走り、全身に鳥肌と、嫌な汗をかき…怖くて、どうしようもなくて。
でも、何故だか眼を開けてしまった。
「女の子が…上に乗っかってて。じーっと覗き込んできて…」
耳元に顔が近づいたと思ったら…
『探したんだから…やっと見つけた』
「そう、囁かれて…」
そこまで話して、屋良は思い出したのか少し身震いした。
「とにかく、怖くて。思いっきり叫ぼうと頑張って…そしたら、急に女の子が苦しがっていなくなったんだ」
「そこが不思議だよね」
それまで、黙々とお菓子を食べ続けていた萩原が不図呟いた。
「何が?」
島田の問いに
「だって…何もしてないのに、苦しがったんでしょ?」
変じゃない?
逆に問いかけてきた萩原に島田はただ首を傾げ、石田を見る。
石田も同じように
「何が変なの?」
と首を傾げた。
「だって、除霊も何もしてないのに」
ねぇ、
と今度は良知に向かって問いかける。
「そうだね、確かに僕もそこはおかしいと思ったんだ」
「…おかしくてもなんでもいいからさぁ。とにかく助けてよ」
半分泣きそうな屋良に
「とりあえず、見てみない事には何とも言えないけど…」
そう答えた萩原は、良知を見て、
「って事だから、今日から皆でココで暮らしてもいいよね?」
とニッコリと笑った。
「…別に、萩原と屋良っちだけでもいいんじゃない?」
と思わず呟いた良知は
「えー!!!俺達だって役に立つよ!!!」
「そうだよ、俺達だけ駄目だなんて、良知君ひどいんじゃない?」
と、予想通りの非難を浴びた。
「…何も好き好んでこんな狭いところに全員で泊まらなくても」
と、最後までささやかな抵抗を試みるも、結局は良知が折れることになる。
「はぁ…」
仕方ないか。屋良っちの為だ。
ばれない様に、こっそり溜息をついた。
++ ++ ++
次の日、寝るのが怖くてヤダ!!!と子供のように駄々をこねた屋良に付き合って、一睡もしなかった生徒会役員一同は全員寝不足の目を擦りながら学校へと向かう。
「ふぁ〜…。俺、今日無理だわ」
「何が?」
あくびをしながら呟いた島田に萩原が首を傾げる。
「授業。受けてらんない」
その答えに
「てか、いっつも受けてないでしょ」
と冷たく答える。
「…ふざけんなよ。お前、クラス違ぇだろ」
「けど、知ってるもん」
「何でだよ!!」
「教えない。って事で学校に到着〜。じゃね、また後でね〜」
と、逆ギレ気味な島田を残し、萩原は走っていった。
「…あのやろう」
握り拳の島田の肩をポンっと叩き、
「寝るなよ」
と、しっかり釘を刺していく良知。
「ちょ、良知君まで」
訴えようとする島田に
「ま、せいぜい頑張れや」
と同じようなあくびをしながら石田も教室へ向かう。
「…お前に言われたくねぇよ!」
叫びも空しく、石田はドアを閉めた。
「…わかる。わかるよぉ島田」
後ろを振り向くと、ウンウン、と頷く屋良が。
「…屋良君だけですよ。わかってくれんの」
そういうと
「俺、ちゃんとわかってるから!!だから…」
今日も一緒に起きててね。
そうニッコリ笑いながら階段を登っていった。
「…あ、そういう事ですか」
あまりにも空しい独り言だった。
++ ++ ++
結局、帰りに良知が様子を見に行くと、萩原以外のメンバーはすっかり夢の中にいた。
無理やり起こして家に帰る途中、屋良が突然「あ!!」と叫んだ。
「何?」
「俺、見舞いに行かなきゃ」
「見舞い?」
「そ、骨折しててさぁ。今入院してんだよ」
「え?誰がですか?」
島田が尋ねると
「町田さん」
と返ってきた。
「えぇ??骨折?また、どうして」
石田が尋ねると
「何かねぇ、この間、大野君の除霊のお仕事手伝ってたときに、足滑らせて山道転げ落ちたんだって」
「山道??」
「そ、そそっかしいよね〜町田さん」
笑う屋良に
「って、それ危ないじゃないですか!!大丈夫なんですか?」
「それがね、落ち方上手かったみたいで、左足を剥離骨折しただけですんだんだって」
「それ、絶対大野君が助けてるよ…」
大変だな、大野君も。
独り言のように良知が呟く。
「とにかく、俺お見舞い行ってくるから。この間行った時、暇だからちょくちょく来てね〜って言われてたんだよね」
「じゃあ、俺達も行きますよ」
石田の言葉に、全員が頷く。
「あ、ホント?町田さん喜ぶわ、きっと」
そうして、全員で病院へ向かった。
そこに、驚くべき出来事が待ち構えていることも知らずに…
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第18話です。
伏線だらけで、あまり進展してない気もしますが、一応更新。
「不可思議」シリーズでは、本編とはあまり関係ない彼らの日常も少しずつ書き入れたいと思ってるので(笑)。でも、最後の部分は思い切り関係してるのです。ま、何が待ち構えているかは想像つくと思いますけど(苦笑)。

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