++其の弐++

「誰だろう…?」
委員会で遅くなった帰り道。生田斗真は誰かがすすり泣く声を確かに聞いた。
「…気の、せいだよな」
自分に言い聞かせるように足早にその場から去ろうとする。
すると…
『寂しいよ…』
確かに、声がした。
「…もしかして、」
ここは最近話題になってる幽霊屋敷。
前に、学校の図書室前で、霊体験をしてからというもの、妙にこういった類のモノに敏感になってしまっていた。
「まさか、な…」
だからといって、幽霊屋敷で幽霊を見るなんてベタな体験を自分がするわけがない。
それに、遅くなったといってもまだ20時を少し回ったところ。幽霊に出会うには早すぎる。
気のせいだともう一度言い聞かせて1歩踏み出す。・・・と、そこに。
「どうしたの?」
蹲る少年が見えた。幽霊屋敷と呼ばれている家の庭に。
あまりにもはっきりと見えるその姿。
幽霊じゃないじゃん。
生田はそう思った。
だから思いきって声をかけたのだ。自分の弟よりもまだ小さいだろう。
少年は蹲ったまままた呟いた。
「寂しいよ…」
生田は、庭に入り、少年に近づく。
「一人なの?」
「うん…」
「お父さんは?」
「…いないよ、」
「お母さんは?」
「帰って…こないんだ」
とりあえず、少年を立たせようと生田は少年の肩に手を置く。
…冷たい。
ずっと、外にいたからだろうか。
「寒いだろ?ここ、君の家だよね?」
尋ねると、少年はコクっと頷いた。
「じゃあ、家に入った方がイイよ」
「…お兄ちゃんも、一緒に来てくれる?」
生田を見上げてきた少年はとても綺麗な顔立ちをしていた。
透き通るように白い肌。
…そう、まるで 
          
血の通っていないような
「一緒に…?」
ふと、嫌な感じがして生田は怯んだ。
「ずっと、一緒に…遊んでよ」
手を掴んでくる。
その手は…氷のように冷たかった。
おかしい。いくらずっと外にいたからって…こんなに冷たいわけがない。
背筋にゾクっと悪寒が走る。
「…ご、めん。お兄ちゃんもう行かなくちゃいけないんだ」
そう言って1歩引いた生田の手を、少年は物凄い力で掴む。
「…離さないよ」
一緒に、遊ぼう。
ニヤっと笑う少年の手が、生田の腕に食い込んでいく。
「う…わぁッッ…」
生田は必死に手を振り解き、その場を走り去る。
振り向きもせず、一目散に逃げる。
そんな生田を少年が寂しい眼で見つめている事にも気付かずに…
++ ++ ++
「俺のところに相談に来たんだよ」
と、良知くんが入れてくれたコーヒーを飲みながら島田が言う。
「で、島田が俺のところに来て、様子を見てきてくれって…」
「それで、良知くんはその家にいったんだぁ」
何個目かわらかないチョコを口に放りこみながら萩原が言う。
「…確かめた方がいいと判断したんだよ」
ちょっと申し訳なさそうに言う良知。
「で、どうだったの?」
思いきり興味を示した眼を向け、石田が聞く。
「生田の、言うとおりだった。庭に少年が蹲ってたよ」
「ラッチ、声かけたの?」
少し怖そうに尋ねる屋良に
「いや、とりあえず遠くから見ただけだから」
「接触してみなかったの?」
今度はポテトチップスに手を伸ばしながら良知に問いかける。
「…それは、萩原が来てからでもいいかなぁ、と思って」
そう言って笑う良知。
…その笑顔を向けられては文句も言えない。
「じゃあ、今日行ってみる?」
そう切り出した萩原に待ってましたとばかりに島田が答える。
「だったらさ、生田君呼んどく?」
その手には既にダイヤルしているであろう携帯が握られていた。
…行動の早さが、島田のとりえだ。
そう言い聞かせて萩原はもう一粒チョコを放りこんだ。




*******
第二話です。
「続」は一応前作よりもホラーにしたいなぁと思っているんですけど…。
どうなるか微妙ですね(苦笑)。
今回の案内役は斗真です。少年の霊、と設定した段階で案内役は斗真とすぐ決めました。
理由は…小さい子を可愛がりそうだから(笑)。あと、弟がいるから少年とからみやすいかなぁと思って(笑)。
さて、どんな展開になるんでしょうかv自分でも楽しみです(笑)。



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