++其の参++ 「怖いよ」 もう、行きたくない… そんな生田を島田が何とか説得し、一同は幽霊屋敷へと向かっていた。 「斗真、その子に触ったの?」 ビクビクしながら尋ねた屋良に、 「うん、肩に手を置いたし…それに、その子に腕を掴まれたんだ」 あの感触は忘れられないよ… 「…かなり冷たかったんだ」 「冷たかった?」 石田が聞きなおす。 「うん。外にいたからかもって思ったけど…それにしても冷たすぎたんだ」 少し、思い出したのか生田は身震いした。 「…それって、血の気がない感じかな」 良知に尋ねられ、生田は頷く。 「ふーん、ねぇ萩原はどう思う?」 ポケットに詰め込んできたお菓子を食べながら黙々と歩く萩原に良知が尋ねる。 「まぁ、会ってみないと何とも…」 おっとりとした口調で答える萩原。 「お前なぁ」 と、島田が何か言おうとした時、萩原は指を差す。 …幽霊屋敷の庭を。 「ほら、いるよ」 その指し示す場所には…少年が蹲っていた。 「…あれ、ホントに幽霊?」 石田が首を傾げる。 無理も無い。それはあまりにもはっきりした光景だった。 「あの子だよ。僕が会ったの」 同じだよ…。 そう呟いた生田に良知も同意する。 「うん、僕が見たのもあの子だった」 「ふーん…」 一人納得したようにフムと頷く萩原に島田が尋ねた。 「幽霊に、見えないけど」 生きてるみたいだ。 「そうだね、まぁそのうちわかるでしょ」 フフっと微かに微笑んで萩原は先を歩いていった。 ++ ++ ++ 「何してるの?」 普通に少年に話しかける萩原。 少年は、驚いたように顔を上げた。 「…誰?」 尋ねられて、萩原はニッコリと笑う。 「君がね、寂しそうだったから入ってきちゃったんだ」 「僕…寂しいんだ」 だから、一緒に遊んで? 少年の問いかけに萩原はコクっと頷いた。 「萩原、どうなってんだよ」 ひっそりと尋ねてくる石田に 「まぁ、とりあえず中に入れてもらおうよ」 笑って少年を促す。 「…わけわかんねぇ」 島田がボソっと呟いた。 ++ ++ ++ 「こっちだよ」 嬉しそうに先を急ぐ少年に手を引かれながら萩原は家の奥へと入っていく。 「とりあえず、ついていくしかないよね」 良知の言葉に促されるよう全員が家の奥へと進む。 「ね、何して遊ぶの?」 尋ねる萩原に、少年は少し考えてから 「かくれんぼしよ」 と笑う。 「こんなに広くちゃ迷子になりそうだ」 ボソっと言った生田に少年が言う。 「上には、登らないでね」 上…2階の事だろうか。 「階段の上は、何かあるの?」 尋ねた屋良に、少年は少し強張った顔をした。 「わかんない。けど、行っちゃダメだと思う」 何となく…怖いんだもん。 そう言って俯く。 「…良知君、どうなってるわけ?」 小声で石田が尋ねる。 「どうって?」 「…この子、幽霊じゃないの?」 「なんだか、わかんなくなってきたよ」 苦笑する良知。 いや、良知には、はっきりとわかっている。 この子は生きてはいないと。 でも…萩原がどうするつもりなのかがわからない。 「まぁ、まかせるしかないでしょ」 後ろから屋良が呟いた。 「僕、鬼になる」 少年は嬉しそうに言う。 「じゃあ、隠れるね」 ほら…皆も隠れてよ。 そう言って萩原は離れていく。 こうなったら最後まで付き合うしかない。 全員がゆっくりと隠れ場所を探す。 「もういいかい」 「まーだだよ、」 そんなやりとりも嬉しいのか、少年はずっと楽しそうに笑っていた。 ++ ++ ++ 「いつまで遊ぶ気だよ」 島田が溜息をついた。 あれから、何度かかくれんぼをし、おいかけっこをし…そしてまたかくれんぼに戻り…一体いつまで続けるつもりなのか…。 「わけわかんねぇ」 口に出していったとたんに、上から声がした。 「島田、隠れてる時は喋っちゃダメだよ」 案外、間が抜けてるね〜。 と呑気に笑う萩原。 … 「てか、お前一番に見つかってたじゃねぇか」 「まぁ、いいじゃない。それよりほら、早くもう1回」 「…いつまで遊ぶ気だよ」 呆れた島田に萩原は少しだけ真剣な面持ちに変わる。 「最初で最後なんだもん、楽しませてあげなくちゃ」 「…何の事だ?」 腑に落ちない顔の島田の手を萩原が引っ張る。 「いいからいいから」 全員が集まっている場所まで辿り着いた時、萩原が言う。 「今度はね、僕が鬼になるよ」 「じゃあ、僕も隠れていいの?」 少年が笑う。 「いいよ、ほら早く隠れて」 少年は急いで隠れに行く。 「…どういうつもりだ?」 尋ねる島田に少し悲しそうに答える。 「これでね、最後だよ」 少し間を置いてから、萩原は大きな声で喋り出した。 「お兄ちゃんたちは皆見つけちゃった」 あと一人。 ゆっくりと階段に近づいていく。 「どこかな」 言いながら、萩原の足は確実に一つの部屋へと向かっている。 「ダメだよッ登っちゃダメだよッ」 後ろから少年が追いかけてくる。 それでも萩原は振り向かない。 「ね、僕ココだよ!!そっちじゃないよッ!!」 追いすがる少年に、まるで気付いていないかのように階段を登りきり… 「ここかな、」 一つの部屋の前で止まった。 「やだよッ…止めてよ…」 少年の声が響く中、萩原はゆっくりとドアノブに手をかけた。 ******* 第三話です。 ふぅ…なんだか、とりとめもなく長くなってしまった(苦笑)。 とりあえず、この事件は次回で解決予定です。 …て、本当は今回で解決するはずだったんだけど、予定外に長くなっちゃって区切っちゃいました(笑)。 えっと、少年ですが。あくまでも「少年」って事で(何)。名前もつけません。というか色々わけがあって…(ぇ)。 次回で納得してください。つーか、漠然と考えてる内容はかなり無理ある気がするんですよね(爆)。ま、いいか(ヲイ)。 TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |