++其の二拾++ 「大丈夫?屋良っち」 良知の家に戻ったとたん、良知のベッドに潜り込んで猫のように丸まったまま出てこない屋良に向かって、良知が心配そうに尋ねた。 「ううん…大丈夫じゃないよぉ。何だかすっごく寒いし、ゾクゾクするんだよ〜」 布団を少しだけ下ろして、目だけ出した屋良は訴えるような涙目で告げた。 「助けて」 その言葉に、良知は「うーん」と唸りながら振り返る。 「助けて…って言われてもね」 どうする? その問いかけの先には…黙々とお菓子を食べる萩原。 「ふぇ??ふぁに??」 「…っていうか、飲み込んでから喋れよ」 島田にツッコミを入れられつつ、無理やりお菓子を飲み込む。 「だからさ、屋良っち助けるにしても…原因がわかんないんじゃどうしようもないよね」 良知の言葉に 「そうだね〜。何が原因なんだろ」 と首をひねる萩原。 「病院がさ、何か関係してるんじゃないの?」 石田の言葉に 「そうだとして…一体何が?」 良知がすかさず尋ねる。 と… 「あ…そういえば」 島田がポツリとつぶやいた。 「何?」 覗き込む良知。 「や、忘れてたんだけど…今日、変な事あって…」 「変な事?」 石田も身を乗り出す。 「うん…ほら、萩原に話したじゃん」 「何〜?」 「ほらッ!!あの女の子の…」 「あぁ!!!何か不思議な女の子!!!」 思い出した!という風に手をポンっと叩く萩原。 「女の子??」 石田と良知が同じ勢いで更に近づく。 「そう、なんか5〜6歳の女の子がさ・・・」 と事の顛末を話す島田。 それを聞いて 「どうしてそんな重要なことを今まで忘れてたんだよ!」 と石田の声。 「や、っていうかわけわかんねぇってくらいしか思ってなかったんだよ」 「それに、全然霊の気配なんてしなかったけど」 萩原の言葉に 「でも…関係、ないとは言い切れないよね」 と呟く良知。 「ねぇ…」 布団を被ってるせいか、くぐもった声で屋良が問う。 「何?」 良知が振り向くと 「その、女の子…髪、長くなかった?」 聞かれた島田は少し考えてから 「あ、うん。結構長かった」 その答えに、屋良は頭だけ布団から出し、島田を見た。 「その子、なんて、言ってたって?」 「だから…「あの人の匂いがした」って。「また、逢える」って」 その答えに、屋良は涙を浮かべて良知を見た。 「それってさぁ…俺の事言ってるんじゃないの??」 「…確かにね。それが一番考えられるよね…屋良っち、心当たり…ある?」 良知が言うと 「やっぱりそうだよね。…やだよ、怖いよ。っていうか、俺、そんな小さい女の子に知り合いなんかいないもん」 きっぱりと言い切る屋良。 「もしかして…生霊?」 石田が萩原を見る。 「そうなのかな…もし、そうならちょっとまずいよね」 萩原の言葉に、屋良は絶叫した。 「何が!!!何がまずいの!!俺、大変な事になってんの??」 取り乱す屋良を「まぁまぁ」と良知がなだめる。 「…その子の、命もかかわってくるよね」 萩原に、確認するように尋ねた良知。 萩原はコクっと頷いた。 「もし…女の子が、屋良君に取り憑いたとしたなら…きっと屋良君も連れて行こうとするよね」 う〜ん、と難しい顔をした萩原に、屋良は両目に涙を溢れさせ叫ぶ。 「やだよ!!!なんで俺?」 「…なんでだろ。心当たり、ないんだよね?」 「ないよ。全然わけわかんないもん」 「そっか…」 暫く首を捻りながら唸っていた萩原が、顔をあげて全員を見渡した。 「ねぇ」 「何?」 全員が身を乗り出す。 「…とりあえず、今日ココにくるんじゃないかな、その子」 「は!?なんで!!」 と慌てふためく屋良に 「だって、島田言われたんでしょ?島田のおかげでわかったって」 「…言われた」 「それって、島田についてた屋良君の匂いで、島田と屋良君が一緒にいるって事がわかったから、島田に憑けば屋良君にたどり着く、ってわかったって事でしょ」 「…マジ?」 固まった島田に 「お前〜!!!なんて事してくれたんだよぉ〜!!!」 と、睨みつける屋良。 「そんな、涙目で睨まれても…」 「ふざけんなよぉ〜!!!」 「すいません…」 「屋良っち…。仕方ないでしょ、島田責めても。どっちにしても、一回憑かれちゃったんだから、見つかるのは時間の問題だったと思うよ?」 「…ラッチ、そんな慰め方いらないし」 項垂れる屋良に、苦笑しながら良知が言う。 「そうすると、今日島田をたどってココに現れる可能性はかなり高いよね」 「うん、そう思う。だから、その時に本当にその女の子なのか確かめなくちゃ」 と、萩原が答えた時、 「…そっか!!!」 突然叫ぶ屋良。 「何??」 石田が驚いて聞き返す。 「島田に憑いて現れるなら・・・島田がいればいいじゃん。俺、一緒にいなくてもよくない??」 俺って、頭いい〜♪ と浮かれる屋良の言葉を 「島田しかいなかったら女の子出て来ないかもしれないでしょ。ダメだよ、屋良っちいなくちゃ」 とサラッと流す良知。 「そんなぁ〜。それじゃあ、俺、人身御供じゃん」 ぼやく屋良に 「助けて欲しいなら協力しなくちゃ」 ね? と子供に言い聞かせるような良知。 「じゃあ、決まりってことで…今日も良知君の家にお泊りだね〜」 となぜか嬉しそうな萩原。 「…島田のバカ」 思わず八つ当たりした屋良に 「や、でも。いつまでも悩まされるより…早く解決した方がよくないです?だから、正体すぐわかってよかったんじゃないですかね」 と何とか正当化しようとする島田。 「さて、寝ないと来ないだろうから今日は早く寝るよ」 良知が言うと 「そうそう。今日は寝かしてくださいよ」 石田も言う。 「寝ないと、力出ないし〜」 とお菓子を頬張る萩原。 「寝ましょうね、今日は」 って言うか、マジ寝かしてください。 島田の言葉に 「お前まで言うなよ〜!!!」 一緒に起きててくれるって約束したじゃん、島田のバカ〜。 と、駄々をこねても誰もかまってくれない。 「諦めた方がいいですよ?」 そう苦笑した島田に、屋良が跳び蹴りをくらわしたのは言うまでもない。 ******* 第20話です。 大変長らくお待たせいたしまして(滝汗)。 しかも、たいして進んでねぇ〜(土下座)。 いや、ちょっとばかし体調不良が続いておりまして… それにしても、屋良っち人身御供って知ってんのかな(バカにしすぎ・苦笑)。 どうなるんでしょうか、屋良さん・・・。 っていうか、島田、開き直りすぎじゃないか?(笑) TOP ≪≪BACK NEXT≫≫ |