++其の二拾壱++

「ねぇ、ホントに寝ちゃうの?」
コソっと隣に眠る島田をゆすってみる。
「…屋良君、寝ましょうよぉ…もう、2時になるじゃないですかぁ」
眠そうに目をこすりながら屋良の方を向く。
「だって…怖いよ」
シュンとした屋良に、島田は少し罪悪感を感じる。
確かに、自分があの時、あの子と接触しなければ、もしかしたら…
「すいません」
思わず謝った島田に
「何?何が??そんな唐突に謝られても意味わかんないんだけど」
少しだけ身体を起こして、覗き込んでくる屋良。
「や、何か俺、余計な事しちゃったみたいだし?」
「島田…反省するなら、言葉じゃなくて態度で示して」
「は?何すればいいんですか」
「一緒に起きてて♪」
…そんな、小首かしげて可愛らしく言われても。
「それは無理です。マジ、眠いんですよ」
屋良に背を向けようと、寝返りをうつ。
「ちょ、島田!!!ひどくない?それってひどくない??ねぇ、もっと話しようよぉ」
泣きそうな屋良の声に、島田は溜息をついた。
「…わかりました」
そういって、屋良の方に向き直ったその時、体中に悪寒が走る。
思わず屋良を見る。
ついさっきまで、話をしていたはずなのに。
屋良は、真っ青な顔で、そのまま床に倒れこんだ。
(屋良君!!!)
叫んだつもりだった。
でも、実際には声は出ていない。
出せないのだ。
(まずい…とにかく、起こさなきゃ)
良知君、萩原、石田。誰でもいいからとにかく気付いてくれれば…
そう思ってる間にも、島田の身体は石のように硬くなっていく。
(金縛り…?)
何とか屋良の姿を確認しようと視線を向けた。
そこには…
「邪魔、しないでね」
ニッコリと笑う少女の姿があった。
でも…
(おかしい…こんなに大きかったっけ、この子)
見たときよりも、髪も伸びてるし、背だって伸びてる。
明らかに成長してるのだ。
今、目の前にいる少女は15歳程度に見えた。
だが、間違いなくあの少女だと思えた。
面影はあるのだ。
少女はゆっくりと屋良の上に乗る。
「探したの。逢いたかった。もう、離さないから」
一緒に…来てくれるよね?
そう言って、少女はニッコリと微笑んだ。
「連れて行かせるわけにはいかないんだよね」
後ろから聞こえた声に、島田は安堵した。
その声の主はゆっくりと少女に近づく。
「島田、大丈夫か?」
そういって、金縛りをといてくれたのは良知だった。
「ありがと、良知君」
やっと動けるようになり、島田は身体を起こす。
「邪魔、しないで!!!」
「君は…どうして此処にいるの?」
少女の言葉を無視して、萩原は尋ねる。
「逢いたかったから。ただ、それだけ」
「逢いたかっただけなら…連れてく、必要ないよね」
「あるわ。だって、私もうすぐ違う場所に行くんだもの」
「だからって、連れてかせるわけにはいかない」
それに…
「君も、身体に戻らなきゃダメだ」
「嫌よ。あんな苦しくて何も出来ないような身体に戻りたく無いもん」
「でも、戻らなきゃ、君は死んでしまう」
「いいのよ!!!この方が思い通りに動けるの!!何だって出来るの!!」
「…仕方ない」
そういうと、萩原は印を結ぶ。
口の中で唱えられた言霊は舌に乗り、少女へと飛ばされる。
「キャッ!!!」
少女の身体は薄っすらと消えていった。
「…消えたの?」
いつの間にか起きていた石田の言葉に、萩原は首を振る。
「ただ、戻っただけ。何も解決してないよ」
そんな事より…
「屋良君、助けなきゃ」
屋良を抱え上げ、自分の指に言霊を乗せた風を吹きかけ、心臓の辺りに触れる。
しばらくすると、屋良の頬に赤味が戻り、ゆっくりと目が開いた。
「大丈夫??屋良君」
「…あれ、何・・・が起きたの?」
「屋良君。明日、病院に行こう」
「え?な、に?何で??」
「行かなきゃ、解決しないんだ」
萩原の言葉に、屋良はわけがわからず首を傾げる。
「どういう、こと?」
「行けば、わかるよ」
萩原はいつに無く真摯な表情で告げた。
いかなければ…屋良君も、そしてあの子の命も落とす事になる。
それが、わかっているから。

とにかく、一刻も早く、起きている少女に会わなければ。




*******
第21話です。
うひゃvv全然展開遅いっすね(苦笑)。
でも、何となく次回でこの問題は解決しそうでやんす。
ちょっと短めですが、この辺が一番キリがいいので、此処で止めておきます。
それにしても屋良…弱弱しくて可愛いぞ(爆)。


TOP                ≪≪BACK  NEXT≫≫