++NO.10++

お店にも少しなれてきて、掃除も日課になってきた。
今日は、いやがる島田を無理やり掃除に参加させて、一哉君に、
「幸人くんって、すごいんやなぁ」
とよくわからない感想を言われた。
「何が?」
尋ねると
「直樹に言う事聞かせるなんて…幸人くんしか出来へん思うわ」
すごいなぁ。
と、妙に感心されてしまった。
島田って…どこにいっても怖がられてるんだなぁ〜。
「でもね、ホントは可愛いとこもあるんだよ」
フフ…と笑いながら一哉君に耳打ちしてたら
「喋ってねぇで手ぇ動かせ」
後ろから思いきり叩かれた。
「なんだよ、島田こそちゃんと掃除しなよ」
少しふくれて言うと
「…あのな、一つ忠告してやる」
大きい溜息をついて島田が言う。
「何?」
「お前な、ふくれると…顔がよけい丸くなるから」
そのうち破裂するぞ。
ニヤっと笑って去っていく…
「ちょッ…島田、掃除!!!」
叫ぶ僕に、ヒラヒラと手を振って消えていく島田…
腹立つ〜〜〜!!!!
++ ++ ++
お店が始まると、中村君がすぐに呼びにきた。
「友一さん、幸人さん2番です」
「めずらし〜。幸人くんと一緒かぁ」
よろしくな
笑顔で手を差し伸べる友一くん。
「よろしく、」
恐る恐る手を差し伸べる。
友一くんは僕の手を勢いよく掴んで思いきり引っ張っていく…。
こ、怖いよ〜。
++ ++ ++
「ともえちゃ〜ん!!!」
近づくなり友一くんは僕の手を思いきり振り解き駆け寄っていく。
あ、この人。前友一君と同伴してたお気に入りさんだ。
…それにしても、掴んだり振り解いたり、友一くんも勝手だなぁ。
「あれ?お友達?」
ともえさんに尋ねた友一君の目線には、見なれない人が。
「そうなの。一人じゃ心細いからって」
「そうなんだぁ〜。ともえちゃん優しいね〜」
…つーか、すっかり僕の存在忘れてるでしょ。
「あのぉ…」
勇気を持って呼びかけてみた。
「あ、何?幸人くん」
…何って。
「お友達…名前なんていうの?」
尋ねると、ニッコリと笑って答えてくれた。
「雪兎」
「え?」
「ゆきと!」
凄い!
「同じ名前なんだぁ〜」
「そうなの。すごい偶然だよね」
笑う雪兎さん。
良かった。良さそうな人だ。
「僕、指名してくれたの?」
「うん。笑顔がね、可愛かったから」
「嬉しいなぁ。そう言ってもらえると」
やっぱり可愛い路線で間違ってなかったって事だ。
「社交辞令だっつーの」
ふと、後ろから声が…
「しまッ…」
「直樹だっつってんだろ」
「…直樹、なんでいるの?」
「ヘルプだよ、ヘルプ。お前等二人じゃ頼りねぇからな」
ドカッと椅子に座る。
「お前のヘルプなんていらねぇよ」
友一くんが負けずに言い返す。
「俺がいた方が、お前ともえちゃんと心置きなく盛り上がれんだろ」
じゃなきゃ、コイツの子守だぞ?
と、僕を指差す…。
「子供じゃないもん」
ふくれると
「大人だっつーのかよ」
「…そうとは言わないけど。」
「それよか、さっき忠告してやっただろ?」
ふくれるな。
そう言われて、更にふくれそうになったとき、友一くんが話題を変えてくれた。
「それにしても、ゆきとちゃんってちっちゃくて可愛いよね〜」
笑って言う友一君に、
「そんな事ないよ」
と答えたら
「おまえじゃねぇよ」
ってどつかれた…。あの、島田は分かるけど…雪兎さんまで。
「だって同じ名前だからまぎらわしいんだもん」
ちょっとふくれてみせる。
「またふくれる!!だいたい、お前の事を「ちゃん」付けで呼ぶわけないだろ?」
あきれた島田が溜息をつく。
「…や、キャラ的にありかな…と思って」
言うと横から雪兎さんに…
「いや、ないから」
とまたまたツッコミが…。
「雪兎ちゃん、いいノリしてんね」
ニヤっと笑う島田に
「やっぱり〜?」
と答える雪兎さん。
…すっかり息投合しちゃってる。
僕を間に挟んで楽しそうに会話してる二人…
あれ、ちょっと待ってよ。
雪兎さんって…僕指名だったよね?
「ねぇ、僕。邪魔?」
尋ねると
「何言ってるの〜!!幸人くんはね、癒し系なんだから」
居てくれるだけでイイのvv
…それって、微妙な誉め言葉。
ちょっと沈んでる僕を見て、雪兎さんがいきなり手を上げた。
「じゃあ、同じ名前のよしみで…ボトル、入れちゃおうかな?」
え??
「ホントに??」
「うん!」
そう言って、雪兎さんはボトルを入れてくれた。
店に響くドンペリコール。
嬉しい。始めてのボトルだ!!
雪兎さん…ツッコミは島田並だけど、すごくイイ人vv
「幸人くん、可愛いから絶対NO1になれるよ」
頑張って。
雪兎さんからの励ましに、大きく頷く。
「ありがと、頑張る」
ニコっと笑うと、雪兎さんも笑ってくれた。
++ ++ ++
お店が終わって、一哉君と掃除をしながら今日の出来事を話し合うのも習慣になっていた。
「今日は幸人くんすごかったねぇ」
ボトル、入ったやん。
「ありがと〜。始めてだからね。嬉しかった」
「やっぱり、幸人くん絶対人気出ると思うてた」
誉めてくれる一哉くん。ホント、誰かさんとは大違いだ。
「でもね、島田に酷い事言われたんだよ」
「酷い事?」
「僕はふくれると顔が丸くなりすぎてそのうち破裂するからふくれるなって」
酷いよね、
そう言うと、一哉君は少し考えてから思いがけない台詞を言う。
「でも、直樹は幸人クンのこと考えてくれてんちゃうかな」
「え?」
「だって、ホストはお客様に愛と幸せを売る商売やからね、ふくれた顔してたらお客様に失礼やモン」
「それは…」
「店長かて、いっつも笑顔やん。どんなに辛くてもいつも笑顔」
あれが、NO1の凄さやと思うよ。
「そっかぁ。確かにそうだよね」
「ね?せやから、直樹は幸人くんの為にわざと憎まれ口叩いてんちゃう?」
「そう…なのかな?」
なんか、島田って凄いんだなあって改めて思った。
それに、ちゃんと僕の事考えてくれてんだぁ。
普段の憎まれ口は、わざとだったんだと思うと、思わずフフっと笑ってしまった。
「島田って、ああ見えて恥ずかしがり屋だからね〜」
「うわぁ、見えへんわ〜」
なんて言いながら一哉君と笑ってたら後ろから殴られた。
「喋ってねぇで、しっかり仕事しろよ。新人」
「…島田だって新人じゃない」
反論すると、島田はニヤっと笑って言い放った。
「俺が?馬鹿言え。俺はNO2なんだよ」
今日やっとボトル入れてもらったお前と一緒にすんな。
そう言ってまた去っていく…。
一哉君…一哉君はああ言ってくれたけど…

島田の憎まれ口は…わざとじゃない気がする。





*********
第10話です。
今回は雪兎さんと、雪兎さんたっての希望で(笑)ともえさんv
リクされた内容を全部つめこもうとしたら、わけわかんない話になっちゃいました(苦笑)。
島田並にツッコミを…こんな感じでよかったでしょうか?
さて、初めてボトルを入れてもらった幸人。
彼はこのままNO1まで上り詰めることができるのか??
…どう思います?(ぇ)

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