++NO.20++

「なんや、暇やな」
今日に限って指名が少ない。
実際、あの一件以来、「怖い人」のイメージがついてお客さんが減ったんも事実やけど…
確かに、顔に殴られた痕があったら引かれるわなぁ。
それにしても…
「こんなに、暇なんも久しぶりや」
ったく、よりによってこんな日に…
「ボーナスは無理やなぁ」
呟いてみたものの、本当はさして悔しいわけでもない。
その為にこの仕事をしているわけやないし…
好きやから、続けてるだけやしな。
なんて、考えていたら…
「治樹さん。ご指名です。8番お願いします」
と、中村が呼びに来た。
向かってみるとそこには…
「あれ?さやちゃん?」
++ ++ ++
「ちょっと待ってよ!!!さやさんって僕のお客様じゃない!!!」
思わず、叫んだ僕に
「せやから幸人には悪いんやけど…って言うたやろ?」
「…てか、取られないように頑張ればいいんだよ、お前が」
と、島田に後ろから冷たく言われた…。
「そんなぁ〜!」
「いいから、黙っとけ。…治樹、続きは?」
「あ、そうそう…それで…」
++ ++ ++
「こんばんは」
「どないしたん?今日は幸人ちゃうの?」
「だって…」
「何?」
「この間、「オレにせぇへん?」って言われたから…」
あぁ…あの台詞。幸人…怒るやろな…。ま、しゃあないか。
「ホンマは、うちは永久指名やねんで?」
「…でも」
「でも…さやちゃんはずっと前から俺のお客さん。せやろ?」
ウインクしてみせる。
さやちゃんはニッコリと笑って頷いた。
ホンマに、ゴメンなぁ…幸人。
それにしても、俺…これやから直樹に色恋得意とか言われんやろか?
「とりあえず、改めて乾杯でもしようや」
そういうと…
「じゃあ、ボトル入れるね」
++ ++ ++
「ちょっと待ってよ〜!!!」
「なんだよ、うるせぇな」
島田に睨まれる。
でもでも…
「だって、僕の時、そんなに簡単にボトル入れてくれなかったし〜!!!」
「…そんなに怒るなよ。俺だって、何人か治樹に取られてんだ…」
そういって友一君が、慰めてくれた。
「っていうか、実力の違い…じゃねぇの?」
余裕で笑う島田。
ったく、ちょっとNO1になったからって…。
++ ++ ++
ドンペリコールが響き渡る中、俺はさやちゃんの耳元に囁いた。
「後悔、させへんから」
指名、変えさせた事。
そのまま、ゆっくりと抱き寄せた。
++ ++ ++
「…ってとこやな、ホンマごめんなぁ幸人」
たいして申し訳なさそうでもない治樹君。
「別にいいですけどぉ…」
あぁ…さやさん…。でも、信じてる。僕のとこに戻ってきてくれるって!!!
力が入って思わず握りこぶしした僕に…
「何、力んでんの?」
と、友一君。
「や、別に…それより!!友一君のお客様はどんな感じだったの?」
と、さりげなく話題転換。
「え?俺?聞きたい??聞きたい??やっぱ、聞きたいよね?」
と妙に身を乗り出してくる友一君。あの…顔近すぎるんですけど…。
「ていうか、どうせまたともえちゃん話だろ?」
「そうなんだよ〜!!だってさ、ともえちゃん誕生日だったんだよ!そりゃ祝ってあげなきゃって感じじゃん」
嬉しそうな友一君に…
「つーか、別に聞きたくねぇよ」
そんなノロケ話。
と島田が言う。
「そんなこといってさぁ〜。実は悔しいんだろ?」
勝ち誇る友一君に…
「悔しかねぇよ」
仕方ねぇから聞いてやる。
と、あくまでも偉そうな島田。
「聞いてくれる?じゃあ、話しちゃおうかな〜」
と、友一君は本当に嬉しそうに話し始めた。
*********
はいっ!!20話です♪
今回は回想の間に幸人の雄叫びを入れてみました(笑)。
嗚呼…治樹カッコイイですよね。
私も耳元で囁かれてみたいもんです(ぇ)。
次回はいっちゃんvvともえさん、お待たせ致しましたvv


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