++NO.24++ 「あの!!」 店内を見て歩いていると、不図声をかけられた。 「はい」 ニッコリと振り向くと、そこには初めて見るお客様。 「何か、お困りですか?」 尋ねると、そのお客様は首を振った。 「あの…店長さんですよね?」 「…そうですけど」 「やっぱり!!そうだと思いました〜!!!」 「…あの」 「やっぱり、思ってたとおりです!」 「えっと…」 圧倒されて何も言えない僕に気づいたお客様がシュンと俯いた。 「あ、すいません…ちょっと興奮しちゃって…周り見えなくって…ごめんなさい」 そんなお客様が可愛くて、思わず俯き加減の頭を撫でてしまった。 「て、んちょうさん?」 「あ、すいません…何だか可愛かったから」 ニッコリと微笑むと、彼女は真っ赤になって 「嬉しいです…」 と、更に下を向いてしまった。 「顔、上げてください、折角可愛いんですから。そういえば…僕に何か用でしたか?」 確か、僕を探していたかのようだった気が… 「あ、そうなんです。私、友達から店長さんのお話いっぱい聞いてて、とっても想像膨らんじゃって…で、実際この目で確かめたくて…」 「そうだったんですか。イメージ、壊れませんでしたか?」 聞いてみた僕に、彼女は大きく首を振った。 「壊れるなんて!!!まさにイメージ通りでした!!」 「どんな、イメージ?」 「大人の…王子様♪」 「…え?」 「…って事は、王様って事ですよね〜♪とにかく、素敵です〜♪」 自分で、王子様だと思ったことは1度もない。 どちらかといえば、治樹の方がそんなイメージが… と思ったけど、そう言ってくれる彼女がとってもニコニコと嬉しそうなので、あえて否定するのを止めた。 「ありがとうございます。あの…お名前は?」 「真綾…って言います」 「そっか。真綾さんか。ありがとう、真綾さん。指名は受けられないけど…こうして時々お話するのは大歓迎なので、いつでも逢いに来てください」 そう言って笑った僕に、真綾さんは大きく頷いた。 「必ず…逢いに来ます!!」 そんな彼女に手を振って、僕はまた店内の見まわりを再開した。 ++ ++ ++ 「王子様、ねぇ」 島田が呟く。 「確かに、店長の笑顔はキラキラしてるからねぇ」 呟いた友一君に 「…それは、王子とは関係ないんじゃない?」 と、良知君は冷静にツッコミをいれている。 …それにしても、良知君はやっぱり凄い。 もっともっと勉強しなくちゃ。 「ね、他には?他にもいたんでしょ?いたよね??」 ちょっと強引に聞いてみる。 「…わかったよ。話すから。話すから落ちついて…」 ちょっと飽きれた感じの良知君。 「…だって、僕もっと勉強したいんだもん」 可愛く拗ねてみる。 ほら、やっぱり僕は可愛さがウリだから。 「それなら、仕方ないよね。幸人君の為に協力するよ」 …良知君ってホントに優しいよね〜vv と、思っていたら… 「…可愛コぶってんじゃねぇよ」 つーか、可愛くねぇよ。 と、横から島田に睨まれた。 …ホント、島田って怖いよね〜。 ++ ++ ++ そろそろ、SARIさんとの約束の時間だ。 そう思ってお迎えの準備をしようとフロアを出かけた時。 「店長」 一哉に呼びとめられた。 「何?一哉」 「…あの、また店長指名したいってお客様やねんけど」 「うーん、そろそろ迎えにでなきゃいけない時間なんだけど…」 でも、折角僕を尋ねてくれたんだから… 「わかった、少しだけでも…」 答えた僕に 「ありがとぉ、店長」 ニッコリ笑う一哉。 ホント、優しいな、一哉は。 そう思いながらお客様の元へと向かう。 また、初めて見るお客様だった。 「はじめまして」 「あの…あの…」 こういうところに来るのは初めてなのかもしれない。 緊張して、言葉が出てこない感じのお客様に、優しく尋ねる。 「お名前、教えていただけますか?」 「あ、あの…ゆかこっていいます」 「ゆかこさん…こんばんは。お会いできて、本当に嬉しいです」 握手をしようと手を伸ばす。遠慮がちに差し伸べられた手を握り、ちょっと引き寄せてみる。 「きゃッ」 キュっと抱きしめてみる。 「緊張…取れました?」 尋ねたら… 「余計…緊張してます」 と、答えが帰ってきた。 「…ごめんなさい」 急いで手を緩めると、ゆかこさんは顔を上げた。 「やっぱり」 「え?」 「逢えて良かった」 「…ゆかこさん?」 「最近、疲れ気味で…毎日沈んだ気分引き摺ってて…だから、店長さんに癒されたくて…」 そうなのか…そんなお客様に、幸せと笑顔を運ぶのが僕らの仕事! 「ゆかこさん」 「はい」 「毎日…大変かもしれないけど…疲れた時は、ほんの少しでいいから僕の事を思い出してみて?」 「店長さん…」 「僕の事…考えて、少しでもゆかこさんの疲れが癒されたら…幸せになれたら…僕も幸せな気持ちになれます。そして、僕も…疲れた時はゆかこさんの事思い出しますから…」 だから… 「僕の記憶に残るように、素敵な笑顔を見せて下さい」 そういってニッコリと笑った僕に 「私…毎日、店長さんの笑顔思い出します!!」 と、ゆかこさんもニッコリと微笑んでくれた。 やっぱり、お客様の笑顔を見るのは、とても幸せな気分になれる。 ++ ++ ++ …ぐうの音も出ない、とはこの事だな。 スキがないもの、良知君。 「店長…やっぱり、言う事王子だね」 島田がボソっと言う。 …確かに、普通じゃ言えないかもしれないな。そんな台詞。言ってる僕が真っ赤になりそうだ。 「…店長、その後SARIさん迎えにいったって事は…SARIさんが最後?」 尋ねる治樹君に 「最後っていうか…お客様はSARIさんお一人だからね〜」 と笑う。 「だから…どんなに、拗ねてもあとはSARIさんとのお話しかないからね?」 と、良知君に言われ、仕方なくゆっくりと頷いた。 「…SARIさんとのお話聞きたい」 一応、もう1度上目使いでおねだり。 「…全く、幸人君にはかなわないよ」 苦笑した良知君。 その横では… 「お前、絶対自分で可愛いと思ってんだろ」 と、呆れ顔の島田。 …だって。 僕って…可愛いキャラじゃない? ********* いやぁ…遅くなりまして(汗) 24話です。 確信犯幸人(爆)。 でも、可愛いのは事実なので許す(何)。 えっと、今回は真綾さんとゆかこさんでしたvv ホントお待たせ致しました…しかも、こんな内容で申し訳ないです(汗)。 次回は…SARIさん、お名前お借りしてもいいですか? …って、すでにちょこちょこお借りしてますけど(汗)。 << TOP << BACK NEXT >> |