++NO.25++

もうすぐSARIさんとの待ち合わせの時間だ。
遅れないように急いで店を出る。
運転しながらチラっと時計を盗み見る。
何とか間に合いそうだ。
5分前に待ち合わせ場所に到着すると、SARIさんはすでに着いていた。
「ごめん、大分待った?」
車から降りて、傍に駆け寄るとSARIさんはフフっと笑う。
「大丈夫。今来たばかりだから」
その言葉に、僕も笑う。
「良かった。じゃあ、行こうか」
助手席のドアを開き、SARIさんを乗せ、運転席へと向かう。
「どうする?まっすぐ店に向かう?」
尋ねると
「真次に任せる」
と微笑むSARIさん。
「じゃあ、少しドライブしよう」
そう答えて僕はギアを入れた。
++ ++ ++
「さすが…って感じ。やっぱ店長ともなると違うねぇ」
手馴れてる感じがするもん。
呟く友一君に深く頷く。
ホストとしての良知君の仕事を勉強するのは今しかない!!
「それで?続きは?」
急かす僕に
「何焦ってんだよ」
と、少し呆れ顔の島田。
「幸人も必死なんやって。勉強すんのに」
な、幸人?
と治樹君が笑う。
「だって、またと無いチャンスだもん!!」
言うと、一哉君も頷いた。
「せやね、僕等、普段店長の仕事ってなかなか見る事出来ひんし」
「そうでしょ?だから、早く続き!!」
身を乗り出した僕に、良知君は
「わかったから。ちょっと落ちついて」
と、苦笑しながら続けた。
++ ++ ++
少し遠回りの道を選び、ちょっとしたドライブを楽しんで、店に到着。
いつもの席へ案内し、右手をあげ合図すると同時に中村がスッと近づき跪く。
「ロマネ・サヴィヴァンと…頼んでおいたのは準備できてる?」
尋ねると
「はい。入ってます」
と答え、中村は橋田の元へと向かった。
「SARIさんに是非飲んで欲しいのがあるんだ」
にっこり笑って告げると、SARIさんは首を傾げた。
「何?」
「高くはないワインなんだけれど…どうしてもSARIさんと一緒に飲みたくて。うちの店には進めたい年代のが丁度無くって…急遽探してもらっておいたんだ」
「ホントに?嬉しい!ありがとう」
その時、中村がボトルを二つ運んできた。
「ありがとう」
お礼を言い、ボトルを受け取る。
「こっちは、ロマネ・サンヴィヴァン。スパイシーで濃厚な味わいなんだ。果実味と酸味のバランスがすごくいいんだよ」
「そうなんだぁ」
頷くSARIさんに、もう一つのボトルを差し出す。
「で、こっちが一緒に飲みたかったワイン。値段はサンヴィヴァンの何十分の一だけど…どうしても一緒に飲みたくて」
「どんなワインなの?」
尋ねるSARIさんに軽くワインの説明をする。
「芳醇な味わいの中にエレガント且つ力強さを感じさせる極辛口なんだ。今回は完璧なヴィンテージと称されている1990年モノを取り寄せたんだよ。SARIさんに合うと思って」
「飲むのが凄く楽しみv何て名前のワインなの?」
「それが1番進めたかった理由なんだよ。このワインの名前はね、ル・スーリール・ド・ランスって言うんだ」
「それって…」
「そう。うちの店の名前が入ってるんだ。意味はね、「天使の微笑み」なんだよ」
「真次にピッタリな感じ。素敵な名前だね」
「SARIさんにこそ似合うと思って」
「ありがとう」
ニッコリと笑うSARIさんのグラスにワインを注ぐ。
「これからも、この店をよろしく…もちろん、僕もね」
約束したくて、店の名前の入ったこのワインを選んだんだから。
++ ++ ++
「凄すぎるな。店長さすがだね」
友一君の言葉に更に強く頷く。
「すっごく勉強になった!!ありがとう!!!」
そう言って良知君の手を握りブンブンと振りまわしていたら…
「人の話ばっかり聞いてないで、幸人はどうなんだよ」
ほら…店長困ってるだろ。
と、友一君に手を離された。
「え?僕…?」
「そうだよな。お前、人の事ばっか聞いてないで、お前の事もちゃんと話せよ」
島田にも言われ…
「どんなお客さんがついてるのか興味あるしな」
治樹君が笑い…
「僕も、幸人君が頑張ってる話聞きたい!!」
と、一哉君まで…。
「わかったよ!!話すよ!!僕だってすごいんだから。頑張ってるんだからね!!」
そう言って、僕は大きく息を吸って話し始めた。
*********
お待たせ致しました〜(汗)。
何とか25話。
SARIさん、お待たせ致しました。
こんな感じになってしまいましたが、気に入ってくだされば嬉しいですvv
あぁ…店長素敵(爆)。
さて!!次回からやっと幸人ご指名の方達の番でございます〜!!!
本当に本当にお待たせ致しました!!!

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