++NO.31++

時の経つのは早いもので…。

今日はクリスマス。
街中がキラキラと輝いて…そして、恋人達が寄り添ったりして…甘い甘い、それは幸せな一時を過ごす一日…。
なのだけれど。
「もちろん、今日もお仕事なんだよね〜」
テーブルを拭きながら思わず溜息。
「なんや、どないしたん?幸人君」
一哉君が振り返る。
「別に〜。世間は幸せ気分いっぱいなんだろうなぁ〜って思っただけ〜」
そう言って、またテーブルを拭き始めると後ろからコツっと頭を小突かれた。
「コラ。幸人君。愚痴ってちゃダメだろ?」
振り向くと、そこには街中のキラキラにも負けない店長の笑顔。
「ごめんなさい!!つい…」
「いいんだよ、愚痴りたくなる気持ちもわかるしね。けどね、うちの店を何処よりも幸せ気分いっぱいにするために、頑張ってよ」
「一番?」
「もちろん。だって、今日のこの日に、僕等に逢いに来てくださるんだよ?ちょっとやそっとの幸せじゃ申し訳ないでしょ?」
だから頑張って。
そういって店長は奥へと消えていった。
「…店長カッコいい〜」
思わず呟く。
「僕等も店長みたいに頑張ろな、幸人君」
一哉君と頷きあった。
++ ++ ++
店が始まる少し前。ミーティングが終わる頃になっても島田が来ない。
「何やってんだろう」
声に出てたらしく、友一君がニヤリと笑った。
「逃げたんじゃね?」
すると治樹君が笑う。
「あほか。今日のこの日に逃げるヤツがおるか。一番の稼ぎ時やのに」
「それもそうだな〜」
…なんとも、甘い世界とは打って変わったシビアなコメントで。
「僕、ちょっと見てくる」
よっと立ち上がって店を出る。
「お前も逃げんなよ〜!!」
笑いながら叫ぶ友一君。
「逃げないよ」
一応答えたけど、きっと聞こえてないだろうな。
「さてと、」
島田は何をやってんだろう。
今日、島田には「今日は別行動」って言われて一緒に出勤してないんだよね。
ちょっとウロウロ通りを歩く。
「お兄さん!!…っていうかちょっとそこの子!!!暇ならよってかない?」
にぎやかな声が響く。
「ちょっと!!聞こえてんの??」
必死だな〜。返事ぐらいしてあげればいいのになぁ〜。
と思っていたら思い切り肩に手を置かれて振り向かされた。
「ちょっと!!返事くらいしてくれたっていいじゃない〜」

………。

「僕?」
「他に誰がいんのよ。今日のこの日にこの辺暇そうに歩いてるのなんて君くらいよ」
ちょっと化粧の濃いお姉さんに笑われる。
「あの…暇なわけじゃ…」
「一人なんでしょ?よってって〜♪サービスするから〜♪」
「あ、あの…」
オドオドしてしまって逃げれない。
…怖いよ〜。とっても怖いよ〜。
「島田〜!!!」
「はいはい。ご指名ありがとな」
叫んだと同時に、お姉さんの魔の手(?)から僕の体が引き離された。
「あれ??」
「ちょっと!!邪魔しないでよ!!」
「悪いな。俺の連れだから」
「はぁ〜?アンタの店はいつからそっちになったのよ!!」
「違ぇよ、馬鹿。従業員だっつーの」
「嘘〜!!!!こんなぽやや〜んとしてるのにホストなの〜?」
「ぽやや〜んとしててもホストなの。じゃあな」
そう言って、島田は僕の手を引っ張っていく。
「島田!!何やってたの!!!」
やっと言葉を発した僕に
「それはこっちの台詞だっつーの。何で客引きに引っかかってんだよ」
「よく、わかんない…」
「ま、いいや。お前はこの時間帯は一人でこの辺ウロウロするな」
わかった?
そう頭をポンっと叩かれた。
「わかりました…」
だって、怖かったしね。
…っていうか。
「っていうかさぁ〜。島田が来ないから探しに出たんだよ?」
島田のせいじゃん!!!
「あ〜ちょっとね。スーツ新調してたら、遅くなっちゃってな」
「スーツ?」
「そ、今日はクリスマスだからな。今日来るお客様は特別だろ?」
ニヤリと笑う島田。
う〜ん、やっぱり島田ってホストの才能あるんだな。
…何となくそんな感じがする。
店に向かって歩いていると、島田が「あれ?」と声を上げた。
そして、少し小走りで…
「何やってんの?こんなところで」
と、前を歩く女の子に声をかけた。
「直樹さん!!」
女の子はビックリしてる。
「もしかして、今日はやっぱり俺に逢いに来てくれたわけ?」
「どうしようかな、って悩んでたんだけど…」
「なんで悩むんだよ!!」
「だって…直樹さん、人気あるから…行っても相手してもらえないかもって…」
俯く女の子の肩を直樹はグイっと抱き寄せた。
「何言ってんだよ。俺がチエを放っとくわけないじゃん〜!!ホラ、チエの為にスーツまで新調したんだぜ?な?だから行こうぜ!」
「嬉しい!!じゃあ、今日もボトル入れちゃいます!!!」
「そうこなくっちゃな〜。さすがチエ。わかってんじゃん。楽しいクリスマスにしような?」
そういって、肩を抱いたままお店へと歩いていく。
…ちょっと。
「一人で歩くなって言ったの島田でしょ〜!!!」
後ろから叫ぶと、「うるせぇよ」と振り向いた。
「ほら、早く来いって。もう開店してるぞ」
あ…。そうだった!!!大変!!!!
「もう!!!こんなところで島田と遊んでる場合じゃなった〜!!!」
猛ダッシュで島田を追い抜き店へと急いだ。
全く、何もかも島田のせいだ〜!!




*********
大変長らくお待たせいたしました。
っていうか、待たせすぎ(滝汗)。
ものすごい久しぶりの更新になってしまいました。
自分のテンションがとっても鬱の時期に入ってたもので、どうしても書けなかったんですよ、この連載。
まだ、鬱を抜け切れてませんが、これを書くことによってテンションが上がればいいなぁと思って更新しました〜。
チエさん…本当にお待たせしました。本当に申し訳ないです。っていうか、待たせすぎたので、もう読まれてないかもしれないですよね…。本当に申し訳ないです(涙)。っていうか、島田ご指名でよかったでしたっけ…(汗)。違ってたら書き直しますから…。

さて、クリスマス。
次回更新時はすでにまた年も変わってたりもするかもしれないですが、このままクリスマスネタ引っ張るかもしれません〜。遅ればせながら、皆様が彼等とクリスマスを過ごせるようにしたいなぁと(笑)。


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