++NO.4++

良知君に手を引っ張られて連れて来られたところには、島田も居て…なんか、皆で踊ってた。
「皆、ちょっといいかな」
良知君の声に、全員が動きを止めて一斉にコッチを向く。
…ちょっと、コワイ。
「今日から、ここで働く事になった幸人君。色々教えてあげてよ」
良知君が、僕を少し前に押し出す。
「よ、ろしく…」
緊張しながら頭を下げる。
「直樹の友達なんだよね」
言葉の出ない僕のかわりに良知君がさりげなく会話を続けてくれる。
…イイ人だなぁ。
「え、直樹の友達なん?せやったらもっとはよ紹介してくれればええのに」
そう言いながら近づいてきたその人は、笑顔で手を差し伸べてきた。
「俺、治樹。ヨロシクな」
「ヨロシク…」
恐る恐る握手した僕の手をもう一人が掴む。
「俺、一哉。よろしくね」
ニッコリと微笑む。なんか、この人イイ人っぽい。
「よろしく」
…と、笑顔で返す僕の後ろから大きな声が。
「ヨロシク、俺、友一!!この店のNO.1狙ってんだ。今日からライバルだな」
…NO.1って、何?
「NO.1は良知君じゃん」
横から口を挟む島田に、
「ばぁか。明日から良知君は店長になんだぞ?そしたらNO.1のポストは空くじゃねぇか」
と勝ち誇ったように言う友一君。
「ま、そんなん言うたところで、NO1にはなれへんけどな、お前は」
目の前の治樹君が笑う。
「なんで?どうして友一君はNO1になれないの?」
「そりゃ、決まってるやん。俺がなるからや」
と笑う治樹君。
ところで…
「で、NO1って…何?」
尋ねた僕を、全員が驚いた眼で見つめてきた。
僕…なんか変な事いった??
++ ++ ++
「簡単に言えば、店で一番人気のある人をNO1って言うんだよ」
開店まであと10分。
島田に連れられて、狭い部屋で椅子に座りながら色々教えてもらったりして。
「で、ここは何の部屋なの?」
狭くて…で、皆座ってて…。
「ここ?ここは指名待ちの部屋。お客さんが来て、指名してもらえたらココから出れるんだよ」
だから、あんまりココに残ってるのは良い事じゃないんだ。
「島田は…いつもココにいるの?」
「はぁ?俺が??いるわけないじゃん。悪いけど、開店と同時に指名入るからね」
ふーん。島田ってモテるんだ。
「じゃあさ、島田がNO1になるかもしれないよね」
「…てか、「かも」じゃなくて、「なる」んだよ」
言いきった島田を友一君が睨む。
「は?お前がなるわけないじゃん。俺がなるんだから」
「てか、指名回数俺のが多いじゃん」
「でも、同伴は俺のが多いし」
「つーか、今日同伴してねぇじゃん」
「今日は一人で来たい気分だったんだよッ!!!」
…あの、言い合ってるとこ悪いけど。
「ね、同伴ってなに?」
「あ?あぁ、同伴ってのは、お客さんと一緒に店に出勤する事」
「じゃあ、今日は僕と島田は同伴だったんだね」
「…違ぇよ。お前、客じゃねぇじゃん」
「あ、そうか」
「…ま、徐々に覚えていけばいいよ」
溜息をついて島田がつぶやく。
…今、思いっきり呆れてるでしょ。
「だって、突然こんなとこ連れてこられたって…」
わかるわけないじゃん。
「仕方ねぇな。一番最初のお前の仕事はショーだから…その後は俺と一緒に動いてればいいよ」
全く、世話が焼けるな。
呟く島田に、
「ありがと…ヨロシクね」
と下手に出てみたものの…僕、悪く無い気がするけど。
ま、いいか。
そんなこんなでとうとう開店時間がやってきた。
良知君の声が響く。
「もうすぐ、開店だ。今日も沢山のお客様に笑顔と幸せを運ぶように」
笑顔と幸せ…。
「それだけでいいの?」
なんか、楽な仕事じゃない??
コソっと呟いた僕に、治樹君がニヤっと笑って答えた。
「それが、一番難しいんやで」
ま、せいぜい頑張るんやな。
ポンっと背中を叩かれた時、店のドアが開く。
「いらっしゃいませ」
全員が一斉に頭を下げる。
…皆カッコイイなぁ。
僕も、こんな風にカッコ良くなれるかな?
どうせなら…NO1になってみたいな。
ふと、一人のお客さんと眼が合う。
「いらっしゃいませ」
とっさにニッコリ笑ってみせた僕。

…もしかして、才能あるんじゃない?



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第4話です。なんとか繋がりましたが…展開遅過ぎですねぇ…(謝)。
最近、体調不良で全然小説書く暇がないんですよぉ(いい訳)。
や、ココから頑張ります。
それでですね…彼らの会話の一部とかにお客様のお名前が出てくる事があるかもしれないんですが…その時は名前を貸してやってもいいわよ、って方いらっしゃいましたら是非貸してください(笑)。


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