++NO.8++

次の日、島田につかまらないように急いで学校を出てお店に向かった。
いつもより30分ほど早くついたんだけど、もう治樹君も一哉君も来ていて…
「あ、おはよう〜幸人」
治樹君に肩をたたかれる。
「あ、おはよう…」
「なんや、今日は早いな」
「うん、掃除とか…一哉君と一緒にしようと思って」
「偉いんやなぁ、幸人って」
せやったら、俺手伝わんでもええよな?
一哉君にそう言って治樹君は部屋の奥へと消えていく。
「全く、最初から手伝う気なんてないんやで、アイツ」
仕方ないなぁ。
苦笑して僕を見る。
「ほな、掃除しよか?」
今日はいつもより気合を入れて掃除せなあかんしな…
呟く一哉君。
「なんで?」
なんで気合入れて掃除するの?
「今日はね、VIPのお客様が来るんやて」
「…VIP?」
「そ、さっき電話があってね、今日行くから〜って」
「VIPのお客様ってどんな感じなの?」
「今日の人はSARIさんって言う人やねんけど、店長がこの店に入った時からのお客様やねん」
来るたびに、店長の為にボトル入れてくれはるんや。
「ボトル入れるのって、すごい事?」
「ボトルの種類にもよるけどね、SARIさんになると、ピンシャン入れてくれはるから」
「…ぴんしゃん?」
「ピンクシャンパンの事」
知らないのかよ、
と声のした方を向くと、島田が腕を組んで睨んでる。
「なーんで、先に来てんだよ」
学校で、待ってたんだぞ…
「…ごめんね」
とりあえず謝ってみる。
ま、いいけどな。と溜息をつく島田。
「それより、島田」
「…だから、ここでは直樹」
「あ、そうか。直樹」
「何?」
「ピンクシャンパンって…高いの?」
「…お前なぁ、ドンペリだぞ?ドンペリ」
「…ドンペリって、何?」
美味しいモノ?
尋ねると、島田が呆れた顔で見る。そんな僕を助けるように一哉君が横から笑う。
「ええやん、幸人君はまだ知らなくても。お酒の名前やもん。ここで働いてたらいやでも覚えるようになる。でも、どうしても覚えたいなら…バーテンの康に聞けばええよ」
「ありがと、今度聞いてみるね。で、ボトル入れるとVIPなの?」
「そういうわけやないけど…」
「SARIさんはね、店長が唯一、店長になってからも接客する特別なお客様なんだよ」
「そうなんだ、すごいんだ」
「ま、とりあえず、そろそろ開店だから掃除きっちりやっとけよ」
そう言って、島田も消えていく。
「…ね、いつも誰も手伝ってくれないの?」
コソっと一哉君に尋ねると、
「良知君…や、店長はよく手伝ってくれてたよ?」
あー、それわかる。
「島田ってさ、新人の時掃除してた?」
しばしの沈黙。
「あー、でもやってたと思うよ?その頃は俺、ホール担当やったから、ようわからへんけど」
ホントかなぁ。ちょっと疑っちゃうなぁ。
「ていうかね、島田っていつから働いてるの?ココで」
尋ねると、一哉君は少し考えてから、
「あー、でもそんなに前ちゃうよ。1年も経ってない」

「じゃあ、島田もまだ新人じゃんッ」
明日から、掃除に参加させなくちゃ。
言うと一哉君が笑う。
「幸人君って、おもしろいんやねぇ」
…どこが?
++ ++ ++
お店が開いたと同時に、良知君が同伴でやってきた。
「ほら、あの人がSARIさんだよ」
友一君が教えてくれる。
腕組んで、仲良さそうに笑ってる。
「ふーん、なんか良知君いつもと雰囲気違う」
言うと、島田がボソっと呟く。
「今は店長やってるから、滅多に見せないけど、あれが良知君のホストやってる時の顔だよ」
「あのキラキラ笑顔でお客様の心を掴むわけやね」
治樹君も呟く。
と、バーテンの康君が声をかけてくる。
「ボトル、入ったよ。行かなくていいの?」
「…行くって何処に?」
「あー、幸人君ボトル経験ないんやったっけ?」
一哉君に聞かれてコクっと頷く。
「あんな、お客様が今、店長の為にボトル入れてくれたんや。値段の高いボトル入れてくれはった時には、ホスト全員でお礼するんだよ」
「だから、急いで行かなきゃな」
横から島田に手を引っ張られてSARIさんの前まで連れていかれる。
「SARIさんが、ピンクシャンパンいれてくれたよ」
笑顔で良知君が言う。
「SARI様からボトル頂きました〜。せーのッ」
「ありがとうございますッ!!」
全員で囲んで友一君の掛け声に合わせて一斉にお礼。
何にも知らない僕は頭を下げるタイミングがずれちゃって…。
「フフ…遅れてるよ、あのコ」
新しい子?
SARIさんが、良知君に尋ねてる。
…僕の、事?
「幸人君、この間入ったばっかりなんだよ」
かなり、将来有望株。
良知君が笑顔で僕を見る。
「ほら、挨拶は?」
「えっと…幸人です。好きな食べ物は…」
「聞いてねぇよッ」
横から島田にどつかれた。
ちょっとしたコミュニケーションなのに…。
「フフ…面白い子」
SARIさんが笑うと同時に良知君が指を鳴らす。
と、皆もとの場所に戻っていく。
「ほら、行くぞ」
「ね、今の何?」
「今のは、もう下がれって合図」
いつもは、お礼をしたらすぐ下がるのが基本なんだけど。
「お前がわけわかんない事言うから」
タイミング逃したんだよ、皆。
なんだよ、また僕のせい?
「でも、すごいね〜。ボトル入れると待遇全然違う」
「お前も早くボトル入れてくれる相手を見つけろよ」
ニヤっと笑う島田。
「そんな事いって…島田はいるの?」
ボトル、入れてくれる人。
尋ねると、勝ち誇ったようにフフンと鼻で笑った。
「いるに決まってんだろ、」
その時、
「直樹さん、4番ご指名です」
ウエイターの中村君が呼びに来て、
「じゃあな、」
と、島田はさっさと行ってしまった。
指名待ち部屋に戻る。
皆、すごいなぁ。なんだか、お店の中がキラキラ輝いてるって感じ。
ちょっと、真剣にこの仕事してみよう。ってふと思った。
とりあえず、島田の仕事の仕方を研究してみようかな。
僕も、早くNO1になりたいッ。
いっぱいボトル入れて欲しいッ。

ところで…ボトルって、美味しいのかな?



*********
第8話ですー。
今回はSARIさんでvv
やはり店長指名ですよね〜v店長指名って事はやっぱりVIPかなぁ〜っと(笑)。
私も良知と腕くみたいです(爆)。
えっと、今後の予定としては「アッコさんが島田指名」「雪兎さんが幸人指名」。
えー、この他に「私、この人指名してたんですけどぉ」という方がいらっしゃいましたらご連絡をお願いします(汗)。
メモ、無くしてしまいまして…(謝)。
ぢつは、私ホストについて、全然詳しくありません(爆)。
なので、この話、面白いんだかも不安です(苦笑)。
ホストに詳しい方、色々教えて下さい(笑)。


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