+第5話+

「よっと」
ベッドの上に良知君を降ろす。
とりあえず…眼を覚ますのを待つしかない。
「何か飲も…」
部屋を出て階段を降りる。
台所へ向かい、冷蔵庫をあけてペットボトルを取り出して口につける。
…と、いきなり背筋が凍るように寒くなった。
恐る恐る振り向いてみる。
何か、いる…
今までは振り向いても何も見えず、視線だけを感じていたけど…
微かに、黒い霧のようなものが見える。
その霧は徐々に何かを形作ろうとしているようにも見える…
「…なんだよ、コレ」
恐怖に、動くことが出来ない。
しばらく霧から眼が離せないでいると、ゆっくりと消え始めた。
「何が、起きてるんだ?」
数分すると、すっかり見えなくなっていた。
一体、何だったのだろう。
ふと、良知君が心配になった。
急いで階段を駆け上がる。
勢いよくドアをあけ、ベッドの上に視線をやる。
「…良知君」
まだ、眼を覚ましてはいない。
そっと近づき顔を覗き込む。
…生気のない、青白い肌。
不安になって胸に耳を当てる。
…良かった。
心音が聞こえる。…生きてる。
「ん…」
気がついたみたいだ。
「良知君?」
「…い、しだ?ココは…」
「俺の家。良知君、また倒れたんだよ」
「…ゴメン」
「謝らないでよ、良知君は何も悪くないから」
「でも、迷惑かけてる…」
「迷惑じゃないよ、弱ってるときくらい頼ってよ」
「ありがとう…石田」
そういって弱々しく笑う良知君に、胸が切なくなった。
絶対に、俺の感じる恐怖と良知君には何か関係があるとしか思えない。
どうして、良知君が…こんな辛い目にあわなくてはいけないんだろう。
切なさに言葉を失っていると、携帯がなった。
ディスプレイには…島田直樹の文字。
「もしもし」
「石田?話があるんだけど」
「何?」
「良知君、どうした?」
「今、やっと目ぇ覚ました」
「そっか…じゃあ、まだ一緒なんだな」
「そうだけど…」
「…とりあえず、まだ良知君には聞かせたくない話なんだよ」
「どういう、事だよ」
「まだ、はっきりした事じゃないし…石田、一人になったら連絡して」
「…何時になるかわかんないよ?」
「何時でもいいよ、とにかく知らせておきたい事があるんだ」
言われて、俺も思い出した。
「俺も、あるんだ…話」
「また、視線感じたのか?」
「それだけじゃない…とにかく、後で話すよ」
「わかった。必ず連絡しろよ」
そういって電話は切れた。
「石田?」
良知君がゆっくりと身体を起こす。
「なんでもないよ。それより、起きあがって大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫だから…帰るよ」
「まだ休んでいきなよっ」
「や、大丈夫。ありがとな、石田」
「じゃあ、家まで送ってくよ」
「いいって、大丈夫だって」
「でも…」
「もうっ!心配しすぎだって」
苦笑する良知君。
「…ホントに大丈夫?」
「大丈夫」
そこまで言われては引き止めようもない。
心配だけど、仕方ないか。
部屋を出て、階段を降りる途中で少しフラフラした良知君に、「やっぱり危ないよ」と何度も言ってはみたものの、そんな俺の言葉を振りきって、良知君は帰っていった。
「…良知君、もしかして気ぃ使ったのかな」
さっきの電話のやりとりで、俺に用事があるって察したのかもしれない。
「全く、こんな時まで気ぃ使うんだから…」
良知君心配だけど…島田の話も気になる。
とにかく、電話しよう。
1コールしないうちに島田が出た。
「もしもし」
「島田?今、良知君帰った」
「そっか…じゃあ、今から、そっち行くよ」
「わかった」
電話を切る。
島田の話は一体なんなのだろうか。
何か、わかったんだろうか…。
それに、さっきの霧は一体…。
不安な気持ちを抱えながらも、俺は島田が来るのをただひたすら待つしかなかった。




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早いですv第5話ですvv
あの、前にこの連載短い予定っていってたんですけど…思った以上に自分で気に入ってきましたんで(笑)、長編にしようかとも思い始めてます(爆)。そのわりには、すでに確信に近づきつつある今日この頃(笑)。
あぁ、ラッチが心配…って、自分で書いといて何言ってんだか(苦笑)。


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