+第6話+

島田を待っているのが、とても長く感じられた。
不安と、恐怖。とにかくわけのわからない心境が入り混じった今の俺の気持ちは、何と言っていいかわからないが、出来れば2度と体験したくないモノだ。
溜息をつきながらベッドの上に寝転がる。
と、チャイムの音。
急いで玄関を開けると、そこには神妙な顔つきの島田が立っていた。
「ゴメン、遅くなって」
言いながら島田は俺をすりぬけて俺の部屋に向かう。
「何か、わかったのか?」
心臓がもの凄い早さでリズムを刻む。
それには答えず、島田は部屋に入るとベッドの上に座って溜息をつきながら足を組む。
そのまま、あごに手をあてて何かを考え始めた。
「島田…?」
「なぁ、石田」
「なんだよ」
「お前、今日気がついたことないか?」
「は?」
「良知君と居て…普通と違ったことないか?」
「…良知君と居てっていうか」
と、俺は「黒い霧」について島田に話した。
すると、また考え込む島田。
「なぁ、島田…何、考えてんだ?」
「あぁ、ちょっとな…」
そういって、一人で「まさかな…」「でも…」と呟いている。
「おいっ!!俺を無視するなよ」
と言ってから、いつもは二人で行動しているのに、何故か萩原が居ない事に気がついた。
「なぁ、萩原は?」
「あ?あぁ、萩原?ちょっと難しい話になるし、ちょっと複雑な話になるかもしれないから…」
まずは、お前だけに話しておきたかったんだ。
言われて思わず息を呑む。
こんなに真剣な島田を見るのも久しぶりだった。
「…で、話ってなんなんだよ」
恐る恐る聞いた俺に、島田はやっと話し始めた。
「…さっき、ファミレスで萩原が気がついた事があるんだ。お前が視線を感じている間…良知君の影がなかったらしいんだよ」
「は?」
影が…ない?
「視線を感じている間だけ、だったらしいけど」
「それって、どういう事?」
「俺がそれを聞いて思ったのは、お前の視線の相手は…良知君の影と関係があるんじゃないかって事だった。でも、俄かに信じられる話じゃないだろ?だから、まずお前に話そうと思って」
「そんな…だって、影だよ?どう関わってるっていうんだ?」
「…でも、お前の話を聞いて余計確信を強めたんだけど」
「…黒い、霧?」
「そう。それって、良知君の影なんじゃないのか?」
「良知君の…影?」
「そう。そう考えれば説明がつくんだよ」
良知君絡みの時にしか感じない「視線」の正体。それは良知君の影だったんじゃないのか?
射貫くように島田に見つめられ、言葉も出ない。
確かに…そう言われればそれが一番納得できる説明のような気もするが…
「…でも、」
なんとか呟いた俺に、島田が「何?」というように片眉をあげる。
「なんで、俺が「視線」を感じるんだ?どうして、良知君の影に見つめられてなきゃ駄目なんだ?それに…どうして良知君は弱ってるんだ?まだ、わけわかんなくって、納得しきれないんだけど」
精一杯問いかけてみた俺に、島田は質問を予測していたかのように答えはじめた。
「多分、良知君の生気を吸い取った影が実体化しようとしてるんじゃないのかな」
「はぁ?」
ちょっとまて。いつも冷静沈着現実至上主義の島田が今なんて言った?
「だから、影が実体化する為に、良知君の生気を吸い取っているから良知君が弱ってきてるんじゃないのか?」
「お前、正気か?」
「至って正気だよ」
「だって、普通じゃ考えられないじゃん」
そんな事…起こるわけがない。
びっくりしてる俺とは対照的に、島田は至って冷静だった。
「でも、いくら考えても、答えはそこに辿りつくんだよ」
それが、一番納得がいく答えなんだ。
「じゃ、じゃあどうして俺が見られなきゃいけないんだよ」
何とか反論してみた俺に、島田は少し溜息をついてから説明を始めた。
「これは…あくまでも俺の推測だけど、お前が視線を感じるのって、良知君の事心配したりとかした時だっていってたよな?」
「…まぁ、そういう時が多い」
「良知君の影は良知君の生気を吸い取って実体化していくにあたって…良知君が邪魔になってきたんじゃないかな。だって、同じ人物は2人もいらないだろ?」
「…でも、良知君が居なくちゃ影だって存在できないんじゃないの?」
「だから、実体化してしまおうとしてるんじゃないのか?」
「そんな…だって、どうしてそうなるんだよ」
「わかんねぇよ、そんな事。でも、もし実体化する為に、良知君の事が邪魔になってきたとしたら…良知君と仲のいいお前も邪魔って事じゃないの?」
「…でも、違うんだよ」
無意識に呟いた俺に島田が問いただす。
「何が、違うんだよ」
「視線が…殺意に満ちてるだけじゃないんだ」
「どういう事だ?」
「ある種の…嫉妬みたいなのも感じるんだよ」
「はぁ?」
今度は島田が目を丸くする番だった。
「や、よくわかんないんだけど…俺が良知君の事心配したり、仲良くしたりすると決まって視線を感じるんだけど、それが…憎しみやら嫉妬やらが入り混じった感じがするんだよ」
「じゃあ、良知君の影がお前に嫉妬してるって事?それで、お前の事を狙ってるのか?」
「…わかんないけど、どっちかっていうと、その方が近い感じがするんだけど」
「なんで、嫉妬するんだよ…」
それが、わかんねぇ…。
そういって島田はまた考え込んだ。
俺も、それ以上言う言葉がない。
とにかく、俺の頭の中は今、何を考えればいいのかもわからないほど混乱していた。
良知君の…影。
一体、良知君に何が起きているのだろうか。


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はい第6話ですvv
とうとう正体がわかってきましたね〜。
良知君の影って事で。つーかですね、タイトルですでに答えは出てたんですけどね(苦笑)。
それにしても、島田さん男前〜vvでも、実際の島田さんは怖がりさんだったりするんですよね(笑)。
でも、いいの。私ヴィジョンだから(何)。
さて、良知君といっちゃんの運命やいかに!?

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