+第7話+

結局、夜中話合ってもどうすればいいのかわからないまま、島田と二人で眠い眼をこすりながら学校へ来た。教室へ入ると、萩原が駆け寄ってくる。
「ちょっと!!僕に隠し事してるでしょ!!」
「…してねぇよ」
眠さのあまり不機嫌な島田。それでも負けずに問い詰めてくる。
「だって、どうして二人して眠そうなの!一緒に学校来てるし!!島田と石田君の家方向逆じゃない!!」
一気に捲し立てる萩原。呆気に取られてる俺をよそに、島田は一瞥すると…
「うるせぇ。喚くな」
と一言。
「酷い〜!!」
なおさら叫ぶ萩原に
「大人しくしてりゃあ、帰りに話してやる。じゃなきゃ教えねぇぞ」
ボソっと切り返し。
「…約束だからね」
そう言うと萩原は大人しく席へ戻っていった。
「…お前、冷た過ぎやしねぇか?」
あまりの事に尋ねた俺に、
「アイツはあれくらいしないと大人しくならねぇんだよ」
眠そうに答える島田。
「でも、少しくらい説明してやってもいいじゃん」
そう言うと、島田は苦笑する。
「萩原に説明するには、今は時間が足りなすぎる。しっかり順序だてて説明してやらなきゃ。だいたい、普通じゃ理解できない話なわけだし」
帰りに、ゆっくり説明してやるよ。
言い残して、島田は席につくと机に突っ伏して寝始めた。
あぁ、なんだかんだいって、萩原の事を考えてやってるんだなぁ。
やっぱり島田って色々すげーよな。
目先の事だけじゃなくて、後々のことも考えて行動してんだなぁ。
今回の件だって、真っ先に俺だけに話に来てくれた分、ゆっくりと考える時間も出来た。
まぁ、何か解決したわけではないけど…一晩中話合ったらぐちゃぐちゃな頭の中も少しは整理できた。
そうこうしている内に、1時限目が始まる。
授業中も良知君の事や影の事が頭から離れない。
そういえば、良知君は昨日無事に帰れただろうか…。
気になった俺は授業が終わると同時に3年の教室へ向かった。
相変わらず、何とも言えない威圧感があるが、そんなことを言ってる場合じゃない。
勇気を出してドアから覗き込むと、ヒョコっと下から覗き込まれた。
「ラッチ、探してんの?」
「うわっ!ビックリしたぁ」
「…一々驚くなよ」
「すいません…」
「で、ラッチならいないけど?」
え?
「また、保健室ですか?」
やっぱり、また倒れたんだろうか。
「今日はお休み。よくわかんないけど…最近体調悪そうだったしね」
良知君が休み…。
昨日あんな事があっただけに、言いようのない不安が過る。
「ありがとうございました」
屋良君にお礼を言って急いで教室へ戻る。
鞄を手に取ると、まだ突っ伏して寝ている島田の肩を叩く。
「んぁ?」
目線だけ上げて睨みつけてくる島田。
…怖ぇよ、お前。
「俺、帰るわ」
「は?なんで?」
前髪をかきあげて島田が上体を起こす。
「良知君、休んでるらしいんだ」
「マジで?」
「うん、今屋良君から聞いた」
「ヤベぇな…」
何か、あるかもしれない…。
呟く島田に
「そういうわけだから。とりあえず後で連絡する」
それだけ言って教室を飛び出す。
「おい!!石田、ちょっと待てよ!!」
後ろから島田の叫ぶ声が聞こえたが、今は一刻も早く良知君の所に行きたかった。
大丈夫だろうか…。
とにかく、不安で仕方がなかった。
++ ++ ++
良知君は3階に住んでる。
3階までの階段を昇っていくだけで、不安が大きくなっていく。
ドアの前に立つ。チャイムを鳴らすが、返事はない。
ドアノブに手をかけると、鍵はかかっていなかった。
「良知君?」
言いながら、ドアをあける。
静まり返った部屋の中を進むと、ベッドに蹲って寝ている良知君が見えた。
「良知君?大丈夫?」
返事はない。
覗き込むと、良知君の顔色は、血が通ってないように白かった。
「良知君!!」
ゆすってみる。でも起きない。
手首を掴んで脈を取る。脈はある…が、弱弱しい感じがした。
「ヤバイ…よな、これは」
良知君を抱え起こして思い切り揺すりながら名前を呼ぶ。
「良知君!!良知君!!起きてよ!!」
ガクっと項垂れた頭。ダラリと垂れる両腕。
頭の中が真っ白になる。
どうすればいい…どうすればいいんだ…。
とにかく、島田には連絡しないと…。
ポケットから携帯を取り出し、メモリーを押す。
頼む…出てくれ、島田!
俺はひたすら祈った。
…後ろに、黒い影が忍び寄っていた事にも気づかずに。
++ ++ ++
「石田くん、大丈夫かな?」
休憩時間、机の横に立って呟いた萩原に島田は笑って答える。
「連絡、来ないし。大丈夫だろ」
言いながら、島田は言いようのない不安が迫ってくるのを感じていた。
昨日、石田が体験した黒い霧。そして、消えた良知君の影。…今日、良知君は休んでいる。
全てが一直線に繋がった気がした。
良知君が…危ない。
そして…もちろん、石田も。
「連絡くらいよこせよ…」
呟いた時、電話がなった。
急いで鞄から取り出す。
ディスプレイに「石田友一」の文字。
「もしもし!!」
慌てて出る。
「島田…やばいよ…良知君がっ!!!」
「今、どこにいるんだ?」
と、その時、学級委員の叫ぶ声が邪魔をする。
「島田君!教室内で携帯を使うのは…」
「うるせぇ!!それどころじゃねぇんだよっ!!」
怒鳴り返して、急いで鞄を手に取り脇に抱え、横でオタオタしている萩原を掴み、ついでに、萩原の鞄も抱えて教室を出る。
「石田?今、良知君の家か?」
「あぁ。全然…目を開けないんだ。脈が弱ってる…真っ白なんだよ…」
「とにかく、すぐ行くから」
電話を切って走リ出す。
…と、
「島田!!痛い!!離して〜」
…忘れてた。
「ゴメン、萩原」
むりやり引きずっていたらしい…。
「いいけど、大変なんでしょ?」
急ごう。
萩原の言葉に、また走り出す。
何が起きているかわからなかったが…嫌な予感はした。
だいたい、何が起きようとしてるのかは想像が出来た。
…が、これはあくまで自分の予想だ。確定じゃない。
「頼む…当たらないでくれ」
とにかく、祈る事しか出来なかった。



*************
はい第7話です!
おぉ…大詰めになっていっている〜!!!まだ終わらせたくないのに〜!!(爆)
それにしても、今回島田さんカッコよすぎやしませんか?
でも、主役はいっちゃんです!誰が何と言おうといっちゃんです!!
最後にはいっちゃんが鍵を握っているんです!!
…が、まだ終わらせたくないので、これからまた引っ張るかも(ぇ)。

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