+第2話+

「夢?」
コーヒーを片手に、少しだけ驚いた声で良知君が尋ねる。
夢、なんだろうか。
「なんか、ずっと言葉だけが聞えてくる感じ」
「言葉って?」
「忘れないでね…って」
「忘れないでね…かぁ」
意味深だよなぁ…
そう呟いた石田。
「でも…昔聞いた事がある気がして、」
『忘れないでね…約束だよ』
確かに、昔誰かと約束をした気がする。
でも…
「誰だか、全然覚えてない」
項垂れた俺に、石田が追い討ちをかけるように言う。
「記憶力、悪いんだね。島田って」
…そうなのか?
いや、全てを忘れているわけでもないし。記憶力が悪いって問題ではない。
約束を交わした事までは覚えている。
ただ、誰といつ交わした約束なのかが、どうしても思い出せない。
「…思い出せないっていうより、」
少し深呼吸をして、気分を落ち着かせる。
「綺麗にそこだけ抜けてるんだよ」
記憶が…抜けてる。そう、あまりにも不自然にそこだけ記憶が無いのだ。
「それにしても、」
出口のない会話を遮るように石田が呟く。
「毎日、立て続けだとさすがに滅入るよな」
いくら島田でも。
最後の言葉に微妙に引っかかりがあったが、それに反応するほどの元気は無い。
「とにかく、毎日見るって事は何か訴えてるんじゃないかと思って」
怒って、いるんだろうか。
忘れないと、約束したのにすっかり忘れてしまっている事を。
だいたい、この夢を見なければ、約束した事すらすっかり忘れていた。
「もしかして、」
石田が思い出したように問い掛ける。
「島田、事故にあったっていってたじゃん。その頃の事なんじゃないの?」
…たしかに、小さい頃事故にあった。そして、その前後の記憶が不確かなのは事実だ。
でも…。約束した事は覚えていて、相手だけ覚えていないというのもおかしい気がする。
「とりあえずさ、昔のアルバムとか見てみたら?」
塞ぎ込んでしまった俺に、良知君が言った。
「何か、思い出すキッカケがあるかもよ?」
石田も賛同する。
そうかもしれない。昔の写真を見れば…何か思い出すかもしれない。
「そうしようかな、」
顔を上げると、二人が少し微笑んだ。
「元気、だせよ。出来る事があったら協力するからさ」
「そうそう、友達なんだから」
二人の言葉が疲れていた気持ちを少し癒していく。
「ありがと、」
精一杯のお礼を言うと、良知君がそっと頭を撫でてくれた。
「…子供じゃないんだから」
照れ隠しに、嫌がってみる。
「ばか、疲れてるときは、愛情が必要なんだよ」
遠慮すんなって。
そういって、もう一度頭に置かれた手は何よりも優しかった。

友達…今までいっぱい友達を作ってきたけど、
覚えていない友達は、一体何人いるだろう?
そして…その中の一人が、夢で訴えているに違いない。


…でも、何を?

*****
はい、第2話です。
色々、考えている事はあるんですが、上手くまとまりません(爆)。
えー、このシリーズも「コインロッカー」と同じで、最後の大まかな設定だけ決まっているので(汗)。それに向けて頑張っていきたいと思ってます。
かなり暗い感じになってしまうかもしれません。
一応、最後の設定も2パターンありまして…。ホントに暗いのと、救いがあるのと。
で…まだ、悩んでおります(笑)。この先の進み具合ですね。

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