+第7話+

「島田ッ!!!」
良知君の声で飛び起きる。
背中に、いや、身体中にじっとりと汗をかいていた。
心臓が、壊れそうに速い。
「俺…」
「突然叫ぶから…」
すごく、苦しそうだったから…。
心配そうな良知君。
良知君が起こしてくれなければ、あのまま俺は…
「おかしく、なりそうだ…」
思わず両手で頭を抱える。
「どんな、夢だった?ゆっくり、落ちついて話してみろよ」
大丈夫だから…
そう言って、良知君が僕をふわっと抱きしめてくれる。
人の腕の中は、安心する。
良知君は、人が辛い時や悲しい時、どう接すればいいのかよくわかってる。
気分が少し落ち着いてきた感じがして、顔を上げて深呼吸する。
「落ちついた?」
良知君に聞かれ、軽く頷いてみせる。
「なんか、俺が…死んだ夢だった」
「島田が?」
「うん、横たわってる人がいて…顔を見たら俺の顔で…」
「島田だけだったの?」
「…いや、隣に誰か立ってた、」
確かに、その少年は言ったのだ。
「約束、守ってね…ずっと一緒だよ、って」
「ずっと…一緒?」
「うん、それで…振り向いた時、顔が無くて…」
顔が無いのに…その少年が自分をじっと見つめている気がしたのだ。
深く悲しい瞳で自分を見つめている。
その視線が…覚えがある気がして。
「怖くて…どうしていいかわかんなくて」
微かに蘇ってくる恐怖。身体が、震えてくる。
「大丈夫。島田は、ここにいるから」
生きてるから。
「良知君、俺…どうなるんだろ」
一体、誰が何の為にこんな夢を見させるのか…。
「わかんねぇよ、」
ふいに溢れてくる涙。
と、良知君が優しく頭を撫でる。
「寝るの、怖かったら一緒に起きててやるよ?」
少し、気を紛らわした方がいい。
「…ありがと、」
結局、その後、俺は一睡も出来なかった。
++ ++ ++
「おはよう、」
石田が肩を叩く。
「よ、」
「…すげー、疲れてる感じだけど」
「ん…結局、寝れなくて」
「なんか、あったのか?」
「んー、また夢見て…で、その後、寝るのが怖くてさ」
思わず、大きいあくびをしてしまった俺に、
「…大丈夫かよ」
心配そうな石田の眼。
「大丈夫、だと思う」
自信ないけどな、
そう言った俺に、石田が思い出したように言う。
「そういえば、ちょっと話あんだ。お前に、」
「何??」
「えっと、今じゃなくて…出来れば良知君も一緒に」
「じゃあ、一緒に帰るよ」
良知君は今日も泊まっていいと言ってくれた。
正直、一人になるのはかなり怖かった。
「じゃ、後でな」
石田が去っていった後、ふと呼ばれた気がして振り向いた。
「…誰も、いねぇじゃん」
なんだよ、一体何なんだよ
そう思って視線を戻すと、
「ッ…!!!」
目の前に、萩原がいた。
「ビックリ、させんなよ」
「ゴメン…」
「なんだよ、元気ねぇじゃん」
「あのね、話があるの…」
「何?」
「今、言えないけど…大事な話なんだ」
「…今日、用事あんだよ」
明日じゃ、ダメ?
尋ねると、萩原はゆっくりと首を左右に振る。
「今日じゃなきゃ、ダメなんだ」
深刻そうな萩原の声。
「わかった、とりあえず用事早く終わらせて連絡するよ」
言ってから、萩原の携帯の番号を知らない事に気がついた。
「お前、携帯持ってる?」
「持ってないんだ…」
「じゃあ、家の電話。教えてよ」
「…時間あわせて、僕が島田の家に行くから」
じゃあ、後でね…
そう言って、萩原は走っていった。
「なんだよ、変なヤツ」
その時、俺に得体のしれない不安が押し寄せていた。
鼓動が、速くなる。

思い出してはいけない何かを、思い出そうとしている…
気付いてはいけない何かに、気付き始めている…

そんな気がした。


*****
第7話ですvv
そろそろ終盤にかかってきています。
予定通り10話で終わりそうです。…てか、10話より短いかも(汗)。
まだ、わかんないですけどねぇ。なにせ、書いてるの私ですから(爆)。
島田、どんどん追い詰められてますね。「囁き」の島田はどうも弱いキャラに見えますが、そんな弱いってわけではないんですよ。こんだけの事が起きれば、そりゃ島田でも参るだろうと(爆)。
それにしても、ラッチ。素敵です(自分で言うな・笑)。

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