+第8話+

「お前さ、」
良知君の家で、コーヒーを飲みながら、石田が尋ねる。
「夢以外に、周りでおかしいと思う事、ない?」
夢以外で…?
「別に…」
答えると、石田が首を振る。
「や、あるんだよ。お前気付いてないかもしれないけど…」
石田は、俺の夢の話を聞いてから、ずっと気になって一人で調べていたらしい。
「なぁ、お前…萩原といつ知り合った?」
唐突な質問に目を丸くした俺に、石田が続ける。
「今年に、なってからか?それとも中学からか?お前、すげー仲良くしてるけど…あいつの家、知ってる?」
「な、んだよ…急に」
そう言いながらも、鼓動が速くなっていくのがわかる。
常に感じていた不安やある種の懐かしさの原因が、明らかになろうとしている。
「お前の中学に…萩原はいなかった」
色々、聞いてみたけど…
「だいたい、萩原ってどこの高校行ってんだ?」
「…そ、れは」
「うちの、学校ではないよね」
良知君も問いかけてくる。
「高校なんて…いっぱいあるし」
「この辺の高校には、萩原を知ってるやつはいないんだよ」
聞いて歩いたんだ…。
「じゃあ、高校行ってないかも…」
「どうして、現実を見ようとしないんだよッ!!島田ッ!!」
肩を揺すられる。
頭がボーっとする。
萩原は…一体いつから俺の友達だったんだろう。
いつ、知り合って、いつ仲良くなって…
わかんない…
「わかんない、けど…萩原は俺の友達なんだ」
「島田…俺、萩原を知ってるやつに会ったよ」
石田が溜息をつく。
「ほら、やっぱり知ってるヤツいるんじゃん」
少しホッとして呟くと、石田は頭を左右に振った。
「そいつ、小学校の時、同じクラスだったらしいんだけど…萩原は事故にあったらしい」
「事故…」
頭が真っ白になる。
「それって…島田と一緒に事故にあったって事?」
良知君が石田に尋ねる。
石田がゆっくりと頷く。

…認めたくない、現実。

「…がう、」
「島田?」
「違う…萩原は、俺の友達なんだ。だって、今だってちゃんと会って話して…」
「俺は…島田と一緒にいる姿しか見た事ないよ」
良知君が言う。
「萩原が、一人でいるところとか…他の友人と一緒にいる姿は見た事ない」
おかしくないか?
「それに…どうして、島田のいくところに、いつもタイミング良く現れるんだ?」
石田も言う。
「やめろよッ!!萩原は…俺の…」
唇を噛み締めながら呟くと、良知君がそっと頭を撫でる。
「島田…お前も本当は気付いてるんだろ?」
良知君の言う通りだ。
本当は…ずっと前から気がついていたのかもしれない…。
認めたくないから、気付かないふりをしていただけなのかもしれない…。
でも…
「俺、萩原に会ってくる」
会って、確かめてくる。
良知君の手をそっと振り払い、部屋を後にする。
「島田ッ!!どこに行くんだよッ!!」
石田と良知君が俺の腕を掴む。
「萩原が…待ってるから」
約束…したから、
「何、確かめるんだよ…会って、どうするんだよ…」
石田の問いに、しばらく考えてから答える。
「どうして、夢を見せたのか…俺を、連れていきたいのか…それを確かめたい」
そして…友達だと思っていたのは…ウソだったのか…
なにより…本当に、ここに存在していないのか。
「だから、会ってくる」
二人の手を振り解き、俺は家へと走った。



*****
第8話ですvv
きゃ〜!!とうとう、幸人の正体が暴かれようとしていますッ!!
ぢつは石田君はいつも別行動をとって、幸人を調べていたんですねぇ…。
次回は幸人と直樹の対面です。
実は、まだエンディングをどちらにするか考えてないんです(汗)。
どうしましょ、このままだと果てしなく暗くなってしまう…。

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