第弐話backnextindex
「雑音??」
眼を見張る石田。
「そう、何だかさ。ずっと鳴ってるんだよ。気味が悪い」
良知が言うと、石田が不図何かに気がついたかのように、キョロキョロする。
「石田?」
問いかけると、石田は
            (シッ!!)
           唇に人差し指を当てる。
暫く続いた沈黙の後、石田は言った。
「鳴ってる…よね、まだ」
そうだった。
「止めようとしたんだけど、とまらなかったんだ。ずっと鳴りっぱなしだったのか…?」
薄気味が悪い。
動けないでいる良知の代わりに、石田がMDを取りに行った。
良知のコートから抜き出し、イヤホンを耳にする。
「石田…」
呼びかけるが、石田は返事をせずに聞き入っているようだ。
暫く待っていた良知だが、不図石田を見て、背筋がゾクっとした。
「石田…?」
返事がない。
              (怖い)
石田は、ただ眼を見開いて一点を見つめていた。
空を見つめ続けている。
   (何…?)
「石田!!!」
肩をゆする。
不図眼があった。
        (石田…?)
眼が、血走ってる。
と思った瞬間、ものすごい力で肩を掴み返された。
「ちょッ!!!!石、田!!!」
抵抗するも、石田に比べ線の細い良知は簡単に倒されてしまった。
「何すんだよ!!!!」 
    (怖い…怖い!!!)
石田はまるで良知を見ていない。
不図良知の首に石田の手がかかる。
少しずつ力が加わっていく。
                             (く、るしい…)
良知はもがく。
それでも、石田は手を離さない。
石田は呟いた。
「許さない…お前だけは」
(何の…ことだ?)
そして、ニヤっと笑い、耳元に口を近づけ囁いた。
「もう、裏切らせない…お前は…」
(石田じゃ、ない…)
その声は低く、嘲笑うような…
         (あぁ、さっきのノイズ…?)
このままでは、力尽きてしまう。
              (どうしよう…)
不図、眼がそれを捕らえた。
 (MDだッ!!!)
とっさに何とか手を伸ばし、イヤホンを掴み、勢い良く引っ張った。
耳から、外れたイヤホンからシャカシャカと音が聞こえてくる。
石田の手が、止まった。
      (良かった…)
やっと空気が流れ込んできて、思い切り吸い込んだとたんにむせてしまった。
「良知、君??」
眼を白黒させる石田。
「大丈夫!?」
咳き込む良知を心配しているようだ。
(あぁ…石田だ)
安堵した良知は、何とかとまった咳の後に告げた。
「石田…重い」
早く、どいて。
「あぁ!!!ご、ゴメン!!!」
慌ててよける石田。
そして、良知の身体を抱き起こす。
「何が、あったの?」
何で、俺良知君に…
わけがわからない、という顔の石田に、良知は背筋が寒くなった。
(何が…石田に?)
「MD…覚えてる?」
   (あんな事、させたんだ…?)
「あぁ、何となく、ノイズが聞こえて…それで…その後はよくわかんない」
「俺の事、殺そうとした事も…?」
(一体…何が…)
「殺す!?」
眼を丸くした石田にコクっと頷いた。
「もう、裏切らせないって…」
覚えて、ない?
「覚えて、ない」
ショックだったのか、石田は見るからに凹んでいる。
全く、ショックなのはこっちのほうだ。
       (殺されかけたってのに…)
「気にするなよ、石田のせいじゃないんだから」
 (何で、俺が慰めてんだ?)
「でも…」
「とにかく、そのMD気持ち悪いよ…」
「でも、こんなの入って無かったよ?」
良知君に録ったやつも、島田に録ったやつも。
「島田に?」
「うん、良知君のと一緒に録ったけど?」
     (もしかしたら、)
「それ、聞いてみたいな。ノイズ、入ってるかどうか」
  (入ってれば…でも、入ってなかったら)
「俺達が、憑かれた事になる…」
                     (何故…?)
「良知君?」
「ゴメン、何でもない。とりあえず、さっきの石田は何かが乗り移ったとしか思えない」
「幽霊、って事?」
「うん、怨念って感じ」
「やばいよね、それ」
「ヤバイと思う。でも、今平気でしょ?」
「平気。っていうか、よくわかんないや…」
「とりあえず、島田に逢おう。取り付かれているのはCD自体だったら、島田のMDにもノイズが入ってる可能性はある。でも…」
「でも?」
「取り付かれたのが、俺達だとしたら…」
 (どうすれば…いいんだ?)
二人は、黙り込んだ。
不図、イヤホンからもれる音。
「…壊しちゃえばいいんだ」
石田が呟く。
「え?」
良知が聞き返したときには、すでに石田の足が、MDを
               (グシャッ!!)
                                  踏みつけていた。
「石田!!!」
「…新しいの、買ってあげるから」
「や、そういう意味じゃなくて!!!!」
     (呪われる)
とっさに思った。何故だかはわからないが、そう思ったのだ。
「忘れよう。それが一番いいよ」
石田が自分に言い聞かせるように呟いた。






『裏切らせない…俺を、裏切るなよ…』


頭に…
      グルグル回る…


消えないノイズ

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
第弐話です。
ホラーです。
えぇ、今回はホラーなんです!!!V6サイトでもホラーを連載しておりますが、こっちのが、怖いはずです!!!
何故なら、テーマがこっちのが怖いから(何)。
ホラー嫌いな方ごめんなさいね(滝汗)。でも、私が書くものですから、大して怖くないですよ〜きっと(ニヤリ)。ちなみに、私はいつも小説を夜中に書いてるんですが、(その方が気分が出て盛り上がるから・爆)今回は、日中書いてみました。ま、いつ書いてもホラー好きは盛り上がれるもんだ、という事を知りました(爆)。