第四話backnextindex
「…ち、くん」
誰かの、呼ぶ声。
「良知、…ん」
誰?
    (誰だっただろう…)
「良知君!!」
ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうに覗き込む…
(あぁ、)
「石田…」
「良かった…目ぇ、醒めた?突然叫んで倒れるからさぁ、俺すげぇ心配だったんだよ、このまま起きなかったらどうしようって」
な、島田?
そう言って、石田は横にいる島田を見た。
「あ、うん。良知君、大丈夫?」
「大丈夫、だよ…ゴメン」
      (何、が?)
何が大丈夫なのか。
大体、何が起きたのかもよくわからない。
それに…
顔を見るまで…石田の名前が出てこなかった。
いや…石田の顔を見るまで、俺が俺じゃない感じがした。
何だろう…
(不安、だな)
そう、不安。何かが、起きている不安。
そんな気分を払拭しようと、頭を軽く振る
     (ッ…!!!!)
激しい、頭痛が襲う。
「良知君??」
石田が俺を抱き起こす。
「大丈夫??どっか、痛い?」
「だ、いじょうぶ…ゴメン、ホント大丈夫だから」
(怖い…)
怖い…何が、怖いんだろう。
わからない。
何が、どうなってしまったのか。
どうして…
「怖い」
知らずに、口から発せられていた。
「怖い?」
「…わからない」
「…もう少し、休んだ方がいいよ」
石田はそう言って、俺を横たえた。
立ち上がろうとする石田の服を慌てて掴む。
「…何?」
「こ、わいよ…」
小さく、そう告げる。
「わかった。ココに居るから」
石田はまた座り、俺の頭を軽く撫でた。
「俺、とりあえず帰るね」
島田が立ち上がる。
「あ、あぁ。ゴメン、ありがとな、島田」
石田が言うと
「いや、別にいいよ。それよか、何かあったらすぐ相談しろよ」
そう答えて、島田は部屋を出て行った。
本当は、怖くて目を閉じたくはなかった。
でも…意識は、俺の意思とは何ら関係なく、ゆっくりと堕ちていった。
++ ++ ++
不図、目が覚めた。
周りは真っ暗で…
手に、温かいぬくもりを感じた。
「石田…?」
ベッドに突っ伏した石田。
あのまま、眠りについてしまったのか。
ゆっくりと身体を起こす。
 (…ッ!!)
もう、ずっと頭痛が取れない。
不安は徐々に大きさを増す。
早くなる鼓動。
(ドクッドクッ)
あぁ、何だろう。
   (ドクッドクッドクッ)
 この、音。
(ドクドクドクドク…)
      怖い、
(怖い) 
                    怖い
          (怖い)
「いやぁ〜!!!!」
++ ++ ++
突然の叫び声に、石田は慌てて目を覚ました。
「良知君!!!」
暗闇の中目を凝らすと、ベッドの上で半身を起こした良知が、両手で自分を抱え、震えていた。
「良知君!!!」
さっきの悲鳴は、良知のものだったのか。
そう考えて石田は少し違和感を感じた。
あの声は…女の人の声だ。
でも、目の前にいるのは良知しかいない。
「良知君…」
良知の肩を抱え、揺すってみる。
「や…」
「何?」
「いや…怖い…」
「良知君?」
「怖いの…」
…誰だ。
これは、誰、なんだ。
「助けて…」
焦点の合わない目が石田を捕らえる。
「お、願い…」
その目から、一筋の涙が零れ落ちる。
「…誰、なんだ」
石田が呟いたその時
「…キャア!!!!!!!!!!!」
目の前の良知が耳を劈くような悲鳴を上げた。
そして、コンポから大音量で響き渡るノイズ。
「な、んだ??何が起きたんだ!!!」
コンポを止めに行こうと、良知を横たえようとした時、
「助けて…助けて…ねぇ、助けて!!!!」
良知の右手が、石田を掴む。
正気を失ったような、少し笑っているかのような顔。
その間もノイズは鳴り続けている。
そして、間に聞こえる低い声。
『許さない…』
(許さない…)
『裏切るなんて』
                     (そうだ、裏切るなんて…)
石田の手がゆっくりと良知の首筋へと運ばれる。
ゆっくりと、良知の首に手をかける。
そして、少しずつ力を入れていく。
「く、るし…」
それでも、力を入れ続けていく。
「い、や…い、しだッ…」
不図、石田の頭の中で何かがはじける音がした。
慌てて手を離す。
「ご、めん!!!良知君!!!」
咳き込み、そして何とか息を整える良知。
その頃には、ノイズは聞こえなくなっていた。
「ゴメン…俺、なんか声が聞こえて…」
項垂れる石田の手を、良知が掴む。
「何が、あった?」
「…良知君、覚えてないの?」
「俺…気がついたら石田に首絞められてた」
「え!!!その前は?」
「…前?」
訝しそうな良知の顔。
「そんな、」
思わず絶句した石田は、少ししてから良知の手を掴み返し、真っ直ぐに見据えた。
「何かが、起きてる。確実に何かが起きてるんだ。俺達に…」
「石田…」
「良知君、さっき女の人の声で話してた」
「…え?」
「俺、聞いたんだ。良知君、助けてって。怖いって。俺に訴えてた」
「…知らない」
「知らなくっても、良知君は言ってたんだよ」
「怖い…その感情は覚えがあるけど…」
「とにかく、何かが起きてる。俺だけだと、また良知君を殺そうとするかもしれない。だから、島田達呼ぼう?」
石田の言葉に、良知は不安そうに頷いた。


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第四話です。
気付け、石田(爆)。なんてわかりやすくラッチは取り付かれてるんでしょうか(笑)。
それにしても、「ホラーを書く」宣言をして、この連載だけが本当に一応怖い世界を貫いてくれています(爆)。V6のはすっかりホラーじゃなくなったしね(苦笑)。このまま突き進んでくれ(笑)。
さて、次回やっと幸人も出てくると思います〜。